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第137回目(2022年9月)の課題本


9月課題図書

 

武器としての交渉思考

 

現代の日本の若者が苦手とすることのひとつが、「交渉」だったりします。特に日本の場

合には空気を読んで、目立たずに生きることを美徳とする文化があるので、自ら交渉して

欲しいモノを手に入れるということを、自己チューとか、ワガママと考える人が多いんで

すよね。

 

でも世の中を動かすには、交渉というプロセスから逃げることはできないんですよ。それ

は共に戦う仲間と連携することでもあり、お互いの利害を調整することでもあるんです。

そういうスキルについて正面から解説している良書がこれです。

 【しょ~おんコメント】

9月優秀賞

 

今月は、投稿者さんから一次突破の推薦を頂いたのですが、総数が8票と過去最少でした。

 

最終回ということで、本当にいつもの常連さんだけが投稿、推薦されたということなんでしょう。

 

そんな投票の結果は、sarusuberi49さんが4票、msykmtさんが2票、vastos2000さんと、H.

Jさんが各1票となりました。

 

そこで今月はかなりの時間を掛けまして、この4名の投稿を熟読したのですが、残念なが

らみなさん水準に達していなかったので、今月は該当者無しとします。

 


【頂いたコメント】

投稿者 daniel3 日時 
本書では、若者が自らの人生を迎え撃つために、交渉思考が大切であることを述べています。本書の内容は、著者が京大生向けに行った「交渉の授業」をベースとしていますが、社会に出てキャリアを積んだビジネスマンの参考になる内容が多く含まれています。交渉について本書では、「立場が異なり自由に意思決定できる二者が合意を目指してやり取りするコミュニケーション(P.105)」と説明しています。人生においては、立場が同じ人とだけ付き合って生きることはできないため、交渉思考を身に付けることがいかに重要であるかが分かります。本書を読めば、交渉において必要な考え方やスキルを知ることができ、交渉思考がある人とない人が交渉をする場合は、拳銃と丸腰で戦うほどの違いがあるでしょう。その応用範囲は多方面に渡りますが、本稿では、私たちの人生において重要なキャリアに対象を絞り、交渉思考を活かす上で必要なことについて述べます。

まず、交渉において最強の武器となるのは、バトナ(BATNA)であると著者は主張しています。バトナとは、「相手の提案に合意する以外の選択肢のなかで、いちばん良いもの(P.139)」と説明されています。バトナをもつことで、相手の提案を受けるか、受けないかという二者択一の状態から脱することができ、選択の可能性が広がります。その一方で、キャリア、言い換えれば自分の仕事においてバトナを持たない人を「コモディティ人材(P.146)」と著者は述べています。「コモディティ」とは日用品を意味しますが、大量生産により物があふれた現代においては、価格を安くする以外に競争力がない商品につけられる言葉です。人材に用いる場合は、労働単価が安い以外に競争力がない人材なわけですから、どの企業にとってもコモディティ人材にこだわる必要性がなく、他社より好待遇でオファーすることはありません。このように好待遇の転職ができない状態で交渉思考を使おうとすることは、弾丸の装填されていない拳銃を、打とうとするようなものです。そしてTwitterを覗いてみれば、給料が安いと嘆く人たちのつぶやきでは、バトナがないことを裏付けるように、転職で収入を上げようとする行動は見受けられません。より高収入が望めるバトナがあれば、そのような状況にはならないわけですが、なぜ多くの人がコモディティ人材になってしまうのでしょうか。

その理由を考えるヒントが、リクルートから民間中学校の校長になった藤原和博さんの「必ず食える1%の人になる方法」で紹介されていました。その本の中では、各領域で成功するための条件を解説しており、自分の仕事の希少性を高める人に共通した3つの条件が説明されています。はじめの2つの条件を紹介すると「①パチンコをするか・しないか」、「②ケータイゲームをするか・しないか」です。①、②は共に「しない」を選択することで希少性がある方に分類されます。この2つの条件に共通しているのは、タイムマネジメントができるかどうかであると考えます。なぜならば、両者とも誰かが仕組みを作った娯楽であり、そこに自らの意志を立ち上げることなく時間を浪費してしまう人は、周囲に流され、自らの希少性を高めることができないからです。その意味では、テレビやSNSなどで余暇の時間を費やしている人も、同様にコモディティ人材に陥りやすいと言えるでしょう。1日86,400秒の時間が、毎日砂時計から落ち続けている感覚を持ち、自分の意志で時間を活用する意識を持つことが必要です。

そして、3つ目の条件が、「本を月1冊以上読むか、読まないか」です。①、②の条件をクリアし、タイムマネジメントができるようになった後に、読書に時間を振り向けます。ただ、確かに読書は大切なのですが、個人的にこの基準値は、ビジネス書として大衆受けするように、基準がゆるく設定されていると考えました。なぜならば、文化庁の国語に関する世論調査によると、日本人の「年間」平均読書量は12~13冊であり、月に1冊も読まない人が47%なので、1冊以上であれば上位50%程度であるからです。そのため、十分にコモディティ人材を脱したと言うためには、月に7冊以上読む人が4%なので、年間100冊、つまり月平均8冊以上を達成し続けると、間違いなく日本のトップ5%に入ることができます。もちろん読書以外の分野で他人との差別化のために、北極探検家の荻田さんのような人生を歩むこともできます。しかし、その道のりは辛く厳しいものがあり、死の危険さえあります。そのため、他分野に比較すると、年間100冊の読書でコモディティ人材を抜け出すことができるのは、非常に低いハードルと言えます。

以上までで述べたように、本書で得た交渉思考をキャリアに有効に使うためには、バトナを持つ必要があります。バトナを持ち、コモディティ人材を抜け出すためには、タイムマネジメントができるようになり、年間100冊の読書をすることが最も平易な方法です。この先の長い人生を迎え撃つためにも、コモディティ人材を抜け出す対策を行い、交渉思考を活かしていくべきであると考えました。
 
投稿者 3338 日時 
交渉とはお互いの落とし所を見つけて、ただ合意するものだと思っていた。この本には交渉の本質が解説されている。どちらかというと私は、今までは無意識にコントロールされていた方の側であったと思う。特に今年の新戦略経営塾のセミナーで、アンカリングという概念を知るにつけ、その思いが強くなった。

船を錨を意味するこの言葉は、p190にもある通り「最初の提示条件によって、相手の認識をコントロールすること」に他ならない。この本では例としてp193に「この家を売るとしとら〇〇円以上で売りたい」とあるが、私はよく定価〇〇円に惑わされる。主婦の本能かと思われるが、いい加減ここから脱却して、最初の提示金額または提示条件が妥当かという視座で物事を見るようにしたいと思う。この本で解説されている武器となる交渉思考はいくつもあったが、これからはコントロールされるのでなく、こちらがコントロールするためにはどうあるべきかという観点で考えてみたい。

まず最初のポイント、バトナについては概念は知っているものの、漠然とした「相手の思惑」であるという意外の認識がなく、専門用語があることも知らなかった。p139に「相手の提案に合意する以外の選択肢の中で、いちばん良いもの」とあるが、これはたくさんの選択肢を持つことが有利となる。そのために必要なのは情報収集に他ならない。なぜなら、交渉が決裂した時にお互いが得るものの有無を知らなければ、交渉にはならないからだ。一歩進んで、交渉相手にバトナのない状態で交渉できるとしたら、それはこちら側に有利ともなる。またp154に「自分にとって不合理な合意を避けることができる」とあるが、交渉が決裂した時に選択肢があるか無いかで、心の持ちようが違う。それは「死ぬわけじゃないし」といった無理矢理自分を納得させる手段ではなく、選択肢の一つとして予め予定されたものだからだ。心に余裕があれば、その場状況をしっかりと把握し、より良い状態を生み出すことにつながる。


次に価値観が非常に重要な鍵になると考えた。例えば、p204には「相手にとっては価値が高いが、自分にとっては価値が低い」ことを譲歩するときの条件として挙げている。もちろんここで、譲歩した条件が自分にとって価値が低いことを、悟られては意味がない。相手が譲歩させ過ぎたと思わせるくらに、ここは(自分にとって価値の低いことに限る)譲歩すべきだと考える。また、p211から語られる「交渉の争点」もまたどの争点を重要視するかという価値の置き所を探る必要がある。それに対しての提案が解決の糸口になるのは明白だ。そしてp243から展開される職人とのやり取りは、この職人の価値観がどこにあるかを見抜けなければ、工芸品を買うことができない。

いざ交渉という時に、相手の意図や価値観を探るのでは遅い。普段から相手の意図や価値観を考えながら、話を進めるくらいのことをしないと、本番では役に立たない。この本にもあるが、人の価値観は変えられない、故にその価値がどこにあるかを突き止めた方が、交渉の場では有利になる。

最後に武器としての交渉を考察していく上で、行き着いたのは言葉を磨く事であった。p310で瀧本氏も「言葉こそが最大の武器」と明言してしている。確かに相手に合わせて言葉を選びながら話すことができれば、交渉には有利になる。そこで意識したいのは、自分がどこの階層に属する言葉を話しているかを知ることと、交渉すべき人はどこの階層に属した言葉を話しているかを知ることであった。

日本語でさえなかなか通じないのは、この違いを認識せずに話しているからであるとこの本を読んで気がついた。自分の専門分野の言葉を習熟すると同じくらいに、そうではない相手に通じる言葉で話すことも必要となる。また先日他の本を読んでいたら「魔法使い」が実は言葉を自由自在に操る人を指すとユングが言及していた。


この3つの観点から自分のゴール「自分はコントロールされない」に設定するなら、普段から言葉に敏感になることが大切だ。宣伝文句に潜む意図や相手の言葉に含まれる真意。今まで、何気なく対応してきたことを「相手をコントロールするための」データを取るつもりで向き合うことにしたい。仕事中でもそれを意識して相手とやり取りしていかなければ、そこにある真意に気づくこともないだろう。私の専門分野はライティングなのに、今の私はまだ中途半端にしか言葉を操ることができない。だから収入も伸びなかったのだと思う。本当の意味で言葉を操ることができたら!と心から思う。今までも何度か課題図書に取り組んで、私の課題として上がった「言葉」。今までとは違う観点から言葉を磨くヒントを、この本から得ることができたと思う。
 
投稿者 Cocona1 日時 
『最初で最大の交渉相手は自分自身』

本書は、交渉に対する考え方について、講義の形で解説している内容です。途中何度も練習問題があるのも特徴的で、実際に講義を受けている感覚で、すらすらと読むことができました。読みながら当然、練習問題も考えてみます。すると、「あれ、意外と答えが分かる!私って交渉が得意なの!?」などと浮かれたりもしながらページを進めました。

しかし、実際私は交渉が苦手だと自覚しています。苦手意識はなんとなく感じていたのですが、本書を読むことではっきりと理由に気付けました。それは、P180に書いてある通り、「こんなことを言って相手を怒らせないだろうか」と思ってしまうことです。交渉の前から自分には無理と、すぐに諦めがちなのです。特に家族などの近い相手ほど、過去の経験から、多少のことなら自分が我慢した方が楽だと考えてしまいます。

本書ではこの解決策として、自分の中で役割によってキャラを分ける考え方を紹介しています。自分が交渉人としてふるまうことで、プレッシャーから解放されるというのです。この方法は私にとってかなり有益に感じ、ぜひ活用していきたいと思いました。

さて、本書を読んだ矢先、まさに家庭内で交渉が必要になる案件が起こります。しかし、「本書のテクニックを使うチャンスだ!」と張り切った自分がいる反面、やはり無理だと諦めようとする自分もいました。そこで私は、先述の「役割を分ける思考方法」を踏まえて、家族に対して交渉を進めたい自分Aと、消極的な自分Bを心の中で演じることにしました。その上で、家族に対する交渉の前に、まずは自分Aが自分Bを交渉してみたのです。そもそも、自分Bすら交渉できないようでは、他人なんて交渉できません。

自分Bへの交渉において、自分Aは本書を参考に、下記3つのテクニックを使いました。

1 相手にメリットのあることを提示する(P114)
2 共通の敵を想定して共犯関係になる(P251)
3 相手の「できない」を合理的に潰す(P304)

まず、1について。AとBの自分にとって、家族への交渉は成功すればプラスなので、利益はお互い一緒です。なので、1はすぐにクリアできました。

次に2です。自分ABの共通の敵は、もちろん最終的な交渉相手である家族です。自分ABにとっての共通の敵である家族を想定することで、より交渉の作戦を立てやすくなりました。

1と2をクリアした上で、テクニック3です。自分Bが「できない」と思っていることを全て解消していく思考を何度も繰り返したのです。家族への過去の交渉での失敗体験については、同じやり方を避けるように。交渉のシチュエーションも大事(P282)とのことなので、話をするタイミングもよく考えました。

3つのテクニックを使ってじっくり自問自答することで、自分Aは自分Bの交渉に成功し、考えまとめた家族への交渉作戦を実行できました。結果的に、家族への交渉は拍子抜けするくらいあっさりと済み、大成功。この経験を通して私は、自分自身の中で「役割分担&交渉」を行うと、交渉の苦手意識克服につながることを実感できました。

ここで、家族への交渉だけを見ると、自分ABで役割分担する方法も、ただ家族に向けての交渉を考える方法も、同じように感じられるかもしれません。しかし、「役割を分けることで自分のことだとは思わずに客観的に物事を考えられるようになる(P180)」という著者の主張通り、「役割分担&交渉」でかなりプレッシャーを軽減できました。なぜなら、いきなり他人である家族への交渉を考える前に、自分Bからまず交渉することで、交渉のハードルを下げられたからです。

今回、本書を参考に交渉を成功できましたが、1回だけではまた交渉が苦手な自分に戻ってしまうでしょう。今後も交渉が必要になるたびに、まずは簡単に諦めてしまう自分Bとの「役割分担&交渉」を繰り返して、交渉苦手を解消していこうと思います。

本書では最後に、若者に向けて大胆なチャレンジをと呼びかけています。私はとっくにその年齢ではなく、若いころのチャレンジ精神をもう一度、と言われても簡単なことではありません。そんなことを考えながら読んでましたが、またすぐに諦めている自分に気付きました。しかし、ここでも自分自身の「役割分担&交渉」の出番です。新しいチャレンジをすぐに諦めてしまう老人思考の自分に、若者思考の自分から交渉してもらうのです。

このように考えると、私にとって交渉時の最初で最大の相手は、「諦めグセのある自分」なのだと思い至りました。しかし、「役割分担&交渉」が、交渉苦手の解消だけではなく、何事に対しても諦めがちな自分のクセからの卒業も手助けしてくれそうです。これからは、諦めグセが出てきたら、本書のテクニックを思い出してまずは自分を交渉し、そこから外へと広げていくのを新しいクセにしていきたいと思います。
投稿者 shinwa511 日時 
本書を読んで、交渉力を武器にする事で、社会や自分自身の環境をより良くして行ける、という事を改めて感じました。


著者は大学で教鞭を取った内容を本書にまとめていますが、大学の授業では講師が教壇の上に立ち、黒板で書くテキストの内容を学生に解説しながら板書するという一方的な授業が当たり前でした。


教師が教える立場であり、学生は教わる立場で教室の椅子に座り、画一化された知識を吸収する事が
学校で授業を行う、第一の目標であるとされていた為です。


しかし、情報がネットで煩雑になっている現在、学ぶ学生には情報を吸収する力ではなく、情報が正しいのかどうか、という思考する能力が必要になっています。知識や情報はスマホやパソコンで検索すればすぐに最新のものが出て来るからです。


そして、自分の考え方や価値観の他にも、様々な考え方や思考を持った人達が大勢いて、彼らと協力し無ければ、大きな変化を起こす事は難しくなっているのです。


大きな変化を起こせる力が、個人が持つ力を集約させる事です。民主主義の根幹は意見の多数決であり、
多くの国民に選ばれた政党が国政を動かしています。


これは、学校や会社でも適用されているルールです。このルールがあるからこそ、自分の意見を通したければ、自分に賛同してくれる人達の総意を募り、集約する事で変革することが出来るのです。


そこで、本書で書かれている交渉する力が役に立つのは、自分と敵対する考え方や思考を持った人達と交渉する時です。お互いに自分の考え方や立場があり、それに則った行動をしています。


ツイッターやフェイスブックは、自分と同質の考え方や価値観を持って人達と繋がり易い環境が整えられていますが、そればかりに慣れてしまうと、外からの意見や考え方に順応出来ず、コミュニティー
内でしか交流を持たなくなってしまいます。


自分とは、異なる考え方や行動をする人達は、問題を見ている視点から異なっています。
価値観や考え方の違う人同士が交渉し、協力していければ、それぞれの考え方で欠如している部分を補い、新しい視点や発想に気づくことが出来るようになる変化が、容易に生まれていくからです。


それが出来るのも、交渉というお互いの意見や立場を述べる場があるからです。


相手を説得するのには、自分のロマンとソロバンを把握し相手に話せなければいけません。ロマンとは自分が抱いている夢や野心の事であり、夢や目標の実現のために必要なのが、人員や必要費用等のコストであり、ソロバンの計算が必要になります。


ロマンだけではビジネスにはならず、ソロバンだけでは未来への経営ビジョンが無く、将来への飛躍は望めません。


そして、交渉では相手が何を望んでいて、それに対してどのような話の進め方、決着がつくのかを考えて、分析する事も必要になります。もしかしたら、利害関係が一見、完全にぶつかり合っているように見える問題でも、双方の利害関係を分析するとお互いのニーズを満たす答えが出て来るかも知れません。


相手との交渉を進めていくためには、自分が必要とする情報の収集と、それを基にした相手の分析と思考する能力が、今後もっと必要になっていきます。


自分とは異なる相手が何を欲しているのか情報を収集、分析し、自身がより良いと思う社会に変えていくように行動します。
投稿者 tarohei 日時 
 まず、本書では、相手側の立場や利害関係を考えて、メリットのある提案をすることが重要だと言う。自分の立場を理解してもらうことより、相手の立場を理解することの方が重要であり、自分が困っているから何とかしてほしいではなく、あなたはこうすると得しますよという提案が人の心を動かすという。例えば、採用面接の面接官だとして、就職先がないので困っているのでどうか入社させてくださいと言う応募者と、これこれこういう理由で御社に貢献できますと言う応募者がいたとしたら、どちらを採用するかを考えれば一目瞭然である。さらに、相手の主張をよく聞くことも大事である。利害関係がぶつかるような問題でも、お互いの意見をよく聞くことで、双方の主張を満足する解決案を出すことができるかもしれない。そのためには、相手は何を欲しがっているのか、妥協してもいいと思っていることは何かを見極めて分析することが大事なことなのである。
例えば、オレンジ問題の交渉という寓話が秀逸である。これはハーバード式交渉術の例え話にも出てくる有名な話しなのであるが、姉と妹が1つオレンジを巡って言い争いをしている、2人ともオレンジ1個全部が欲しいと言って譲らない、姉はマーマレードを作るために皮が欲しい、妹はオレンジジュースを作るたまに身だけが欲しい、というもので、相手の主張をよく聞き双方のいいとこ取りをすることで、仲良くオレンジの皮と身を分けて上手く解決できたという交渉術の例え話しである。
 つまり、相手側の利害と自分の利害関係が完全に対立していない場合、双方が重視する事柄と重視していない事柄を明確にすることで、双方の利点を最大化するような落とし所を見い出すことができるということである。交渉というものは、相手の取り分を減らし、こちらの取り分を多く取ったもの勝ちというようなゼロサムゲームではない。相手も自分も納得した上で、ちょうどいい合意点を探すのが重要なのである。仮にあらゆる交渉テクニックを駆使して相手側の主張をねじ伏せて、100%こちら側の主張を通したとしても、今後ビジネスを続けていく中では必ず遺恨が残り、その後の関係性がうまくいかないこともあり得る。
勝ち負けに拘るのではなく、相手側の意見を取り入れて、その中で自分の意見も通せる合意点を探ってことが大切なのである。これもハーバード式交渉術で謳われていることである。

 次に、本書でいう交渉とは、立場が異なり自由に意思決定できる二者が合意を目指してやり取りするコミュニケーションと定義している。合理的に物事を判断する相手とそうでない相手の2パターンに分けて考える。こちらが論理的で正しいことをどれだけ主張しても、合意点を見出しそうと妥協しようが、合理的判断ができない人は交渉相手にはならないからである。こういった手合いにはまた別の交渉テクニックを駆使することになる。
 例えば、自分の実体験でいうと、顧客への商談提案活動をしていて、完全な論理展開で作った資料で顧客へアプローチをかけても、顧客が合理的判断をできないタイプだと、いくら相手の立場視点でメリットを力説しても暖簾に腕押しで、商談は成立しない。論理展開は完全だし筋も通っているのだけれど、相手の思考パターン(好き嫌いや選り好み、合理的判断ができないタイプ)を見誤ると、まとまる話しもまとまらないのである。
交渉相手がどんな思考パターンを持っているかを分析することで、交渉成功率は上がることも経験した。相手の分析を怠ってしまったがために合意できなかったことは何度もある。相手の思考パターンに応じて、いろいろなアプローチが必要であることを過去の経験を通して実感した。本書を読んでいればもっと上手く立ち回ることができたのではと思う。
 一番注意しなければならないのは、誰しも合理的な部分と非合理的な部分を併せ持っているということだ。そしてそれは、その場の雰囲気で出たり入ったり入れ替わったりすることである。その見極めが交渉成功のカギだと言っても過言ではないかもしれない。

 最後に、多くの人と上手く協調して仕事を進めるために必要な武器が交渉である。たった1人では大きなことはできないが、会社なり組織なり集団になれば大きな成果も上げることができるし、そのためにはたくさんの人と上手く協業する必要がある。たくさんの人と上手く協業するには何が必要か。それが本書で書かれている相互の利害関係を分析して調整することで合意を成し遂げるのが交渉思考だということを学ぶことができた。
 
投稿者 Terucchi 日時 
この本はエンジェル投資家だった故瀧本哲史氏の本で、交渉について書いた本である。この本を読むまでの私は、交渉というものが、自分の意見を通すためのものであり、交渉術なるものはテクニックで相手を説き伏せるものだと思っていた。しかし、この本を読んでみると、これが完全な誤解であり、大きな間違いであることに気付かされた。なぜなら、『ふたりの人間がお互いに合意すれば契約が成り立つ』(p21)ことであり、『その合意を作り出す手段こそが、この本のテーマである「交渉」になる』(p24)と言っているのだ。そして、『自分たちの頭で考え、自分たち自身の手で、合意に基づく「新しい仕組みやルールを作るために、交渉の仕方を学ぶ必要がある』(p26)と言っている。著者として、それがタイトルの「武器」なのである。私はこの本を読んで、自己実現するためには交渉というものが不可欠であることを思わされた。そして、その中でも交渉というものは『ロマンとソロバン』(p61)が最も大切だと感じた。今回、私は「交渉の必要性」及び「ロマンとソロバン」について、書いてみたい。

まず、なぜ自己実現のためには交渉が必要なのか、その必要性を書いてみる。私は自分の考えがあっても、相手と意見が合わない場合、つい諦めてしまう。この私の考えは、この本で言うと、まさしく『「自分が困っている」と主張すれば相手は聞いてくれるはず、という「子供の論理」』(p114)なのだ。すなわち、相手に通じないから諦めてしまうのは、実は交渉の力が足りないからなのだ。そういう場合は、『自分の都合でなく、「相手のメリット」を考える』(p87)が大切だと本書は言っている。私は、会社生活で流されてしまっていることは、実は相手のことを考えていたのだろうか?相手の立場も考えて、この本の交渉という観点で、地道に交渉をして行けば、もう一歩踏み込んだ結果になったのではないか。私にとって、それは交渉の必要性が欠落していたのだ、と反省する次第である。

次に、「ロマンとソロバン」について書いてみる。先ほど、相手のメリットを考えることを書いたが、ここで単なるメリット面だけを考えるだけではいけないと考える。なぜなら、もしメリットについても目の前の利益だけを考えるのでは、大きな理想から外れている場合もあるからだ。会社生活を送っていると、つい目先の利益だけを考えてしまい、本来の意味を忘れてしまう時がある。会社は存続しなければならないため、利益を出さなければいけないことは当然である。しかし、利益を考えるだけではいけない。この本では利益面である「ソロバン」だけでなく、「ロマン」も必要だと言っており、更に、『ロマンとソロバンを結びつけるのが交渉』(p67)なのだと言っているのだ。ここで、過去の課題図書に「ニュータイプの時代」という本があったが、これからの時代は利益だけではなく、もっと大きな大義から考えていかなければならない。例えば、会社にとっては世の中における意味も考えていかなければならないのである。単なる利益だけでなく、世の中での会社の位置づけや世の中の役にたっているか等の意味も必要となるのだ。人と交渉するに当たっても、もちろん相手にとってのメリットは必要であるが、それだけでは人は動かず、大義などの意味も欲しているのだ。ここで、自分自身、目先の利益だけに囚われているのではないのか、もっと大きな意味の実現につなげて考えているのか、そして、人との交渉に当たってもそのような「ロマンとソロバン」の観点に立っているのかを考えさせられた次第である。

ところで、交渉を成立させるために、相手のメリットを考えたり、相手の価値観に合わせるために譲歩したりしていては流されてしまうのではないか、と考えてしまうかも知れない。しかし、そうではないのだ。それは、著者が言っている『小さな行動が「道」をつくる』(p322)ということなのだ。本書では、『ジャスミン革命』(p322)の例を取り上げ、まさしく当初は小さなきっかけだったものが大きくなったのだ。これは行動がなければ起きなかったことなのだ。ここで、私は「行動すれば次の現実」という言葉を思い出した。すなわち、小さな行動であっても、それが次の現実につながっていくということなのだ。だから、この交渉という武器を使って、行動につなげていかなければならないのだ。

以上、この本を読んで、交渉というものの必要性とそれを考える上での「ロマンとソロバン」、そして、その行動の大切さを学んだと思う。私ごとであるが、現在、Sクラスに参加し、収入の複線化である副業を目指している。私はサラリーマンであり、会社生活においての交渉などは困った時は上司や他の上手な人に頼ってしまっているのが本音である。しかし、自分自身独立していくためには、自分の考えを持って、それを実現するために、自分で交渉を進めていかなければならないのだ。すなわち、その覚悟が必要なのだ。今回、この本を読んで、交渉というものの重要さを改めて学んだ。そして、私の実生活の中で、この学んだことを実践していきたいのだ。
 
投稿者 str 日時 
武器としての交渉思考

交渉とは自身の要求を通すこと。それ自体は間違いではないのだろう。しかし「交渉が上手くいった」と、当人がそう感じていたとしても、相手が・自分が致し方なく“折れた“とか、権力や立場といった上下関係故に、相手の提示した条件を”受け入れざるを得なかった”といった状況であるならば、その交渉は失敗であり、そもそもそれは“交渉”の域に達してすらなく、強制や強要と何ら変わらないものだということを、本書を読んで感じた。

交渉に於いて利害が生じるのは“相手も同じ”であるということを念頭に置いておかなければならない。一方的に自身の要求を主張し続けたところで、相手の利益にカスりもしなければ意味を成さない。だからこそ自身の立場を理解させようとするのではなく、先ずは相手の立場・利害に焦点を当て、情報を収集するところから始めていくことが重要なのだろう。その上で、相手のボーダーラインが何処に設定されているのかを模索しつつ、自身が“折れる“ことのないように、こちらも複数の選択肢を用意しておく必要がある。価格交渉にしても、ただ漠然と値下げを要求したところで相手にとって何のメリットもない。こちらからの提案に乗ってくれたことで相手にとって「どのような利益があるのか」を提示できるようにしておくこと。それが”継続的な取引“であれ”宣伝効果“であれ、合意を得るための材料が必要になる。他にも「A社の方が安価だったが、サービスもアフターケアも充実しているこちらのB社と関係を築きたい」といった他との引き合いを選択肢に加えるなど、方法はさまざまだろう。どちらか一方ではなく双方が納得した形を理想とするなら、本当の意味での”交渉“とは実に奥が深いものだと感じた。忘れてはならないのは、自分だけではなく相手にも意思決定の権利があり、当然ながら”断る”という選択肢を相手も持っているということ。互いが「今回の交渉は上手くいった」「得をした」と納得できる状況を目指さなければならない。

交渉とは我儘を強引に押し通すことなどではなく、双方の“合意“の下に成り立つもの。それを得る手段の一つだということを履き違えないようにしよう。
 
投稿者 AKIRASATOU 日時 
本書は著者が京都大学にて行っている「交渉の授業」をまとめたものである。本書ではこれから生き残る仕事は交渉をともなうものだけであると記載している。交渉においては『ロマンとソロバンの両方を考えることが不可欠(P67)』であり、夢やビジョンなどのロマンは主観的かつ答えが無いものであり、AIのような機械に代替される可能性は今のところない。本書は初版から10年以上経っているが、現在もAI等の機会がロマンなどの主観的な物事については答えを出せない状況は変わっておらず、交渉思考が今後においても非常に重要であり、活用できなければ社会人としての未来は暗いと感じた。そして、この交渉思考の土台には「言葉」があり、交渉思考を身につけるためには、言葉を使って自分の考えを的確に表現する事、自分の味方を増やす事、意見が合わない相手とも上手く折り合いをつける事など言葉を操るスキル、つまり日本語力を高める事が最優先事項であると考えた。以下にて、そのように考えた理由を述べる。

まずは日本語力を高めるとはどういう事かを説明する。ここで述べる日本語力とは「自分の考えを的確・正確に表現することと、相手の思考・発言の趣旨・内容を的確・正確に理解すること」である。交渉においては自分の考えを相手が理解できるように伝えること、相手の考えを理解することが必要になる。なぜなら、交渉は最終的に相手が納得し合意を図るものであるため、自分の意見を理解してもらうか、相手と自分の考えを混ぜ合わせた着地点を見つけるために相手の考えを理解し、納得してもらえる着地点を提示しなければならないからである。そのためには、自分の考えを的確・正確に伝えること、相手の考えを的確・正確に理解することが必要であり、ここではそれを「日本語力」と定義する。

なぜ、日本語力を高めることが最優先事項であると考えたのか。その理由は二つある。一つ目は交渉思考の切れ味を鋭くするため、二つ目は人として成長するためである。まずは一つ目の「交渉思考の切れ味を鋭くするため」について説明する。交渉思考の切れ味を鋭くするとは、「交渉思考の活用において、相手の利害関係を分析・理解し、それを満たしながら自分の要望も実現することで可能な限り円満な解決に繋げること」である。本書(P130)に記載されているように交渉において最も大事なのは相手の利害に焦点を当てることである。そこに焦点を当てて、正しく分析・理解するためには相手の話を聞く、相手から情報を引き出す必要がある。そのためには相手が話したくなるような質問や、気づいたら話していたような会話を組み立てる能力が必要になるだろう。そのような能力を高めるためには、質問の仕方や会話の組み立てを考える必要がある。考えるとは、自分の頭の中で行うものである。しかし、今の自分の頭の中に入っている言葉や知識だけでは足りないため、読書や自分の考えを発信することなどにより伝え方や相手の心情など学ぶことで、考える質を上げる、深く考えられるようになる必要がある。それは、日本語力が向上したとも言える。よって、交渉思考の切れ味を鋭くするためには日本語力を高めることが必要であると言えると考える。

次に二つ目の理由である「人として成長するため」について説明する。交渉を行うのは人と人であり機械的な合理性だけが必要となる訳ではないため、人としての魅力、人間的な器の大きさ等も重要なポイントになると考える。その理由は、仕事において「理解はできるけど納得できない」「正論ではあるが承諾できない」等の場面を何度も経験した事があるからである。社会人であれば「誰が言ったかではなく、何を言ったかで判断しなければいけない」という話は聞いたことがあると思うが、現実においては「あいつが言うなら承諾しない」「全社的にはプラスになるが、あの部署が評価されるなら反対したい」という場面に遭遇したことは多々あるだろう。交渉思考を活用し、相手との折り合いを上手くつけることは勿論大事だが、それと並行して正しい事や利益になる事を言ったとしても否定や拒絶されないようにするために、人としての魅力や器の大きさ等が必要になると考えるのである。その魅力や器を向上させることは、人として成長することである。そのためには、読書により、自分が理想とする人物像を見つけ言動を真似てみたり、相手の感情や心情に対する理解力を上げること、難しい場面で敵を作らず上手く伝えるための表現を学ぶことなどが重要になる。そのような取り組みは、人として成長するとともに、日本語力を高めることにも繋がると考えるのである。

それでは、これから日本語力を高めるために何をするのか。そのためにはインプットとアウトプットを通した訓練が必要である。具体的には、インプットを通して沢山の知識や情報を入れることであり、読書による知識の拡充が最も大事だと考える。しかし、知識は入れるだけ、学ぶだけでは意味が無い。学んだら使わなくてはならない。なぜなら、料理の本を読んでも料理が出来るようになったとは言えず、料理を作ることによって初めて料理が出来るようになったと言えるからである。そのためには学んだ知識を活用し、アウトプットする必要がある。具体的な目標としては年間100冊以上の読書と読書感想文の作成が必要であると考える。過去5年を振り返っても年100冊読めた年は1回だけであり、この半年に関してもアウトプットの課題を満足に提出できていないのが現状である。しかしながら、このような情けない現状のままではこれから先AIに代替される人間になってしまうという可能性が高まるだけである。そのため、本を読んだら必ず1000文字程度の感想を書く。月に一度の読書感想文の投稿と作文の添削をしてくれるサービスを活用する等してアウトプットの質を向上させるための機会を作り、自分の日本語力を高めなければならないと感じている。
 
投稿者 tomooku 日時 
武器としての交渉思考を読んで

 交渉とは「立場が異なり自由に意思決定できる二者が合意を目指してやりとりするコミュニケーションである」と定義されていた。
本書を読んで私が関心を持った点はお互いに異なる思惑を持った二者が交渉によりどのような変化をして合意に至るのかという点であった。今回は相手の主張を変化させるにはどのような方法があるのかについて考察してみる。

1.相手を正しく知る

 P118にある「オレンジをめぐる交渉」のように同じ一つのオレンジを必要と主張する姉妹が無事に分け合うことができたという小さな合意から、薩摩藩と長州藩が同盟を結ぶことになった大きな合意まで、相手の主張をよく確認し利害の分析をすることで互いの主張が対立していないことに気づくことができる。主張を変化させるというより、お互いの主張を変化させることなく合意できる方法の模索である。
 もう一つ相手を正しく知ることは交渉を有利に進める武器になる。それは非合理的な相手の場合に力を発揮する。合理的な相手の場合相手のメリットは比較的想像しやすいが、非合理的な相手の場合は分かりにくい。相手を知り、相手が大切にしている価値観を自分も尊重することで相手の主張を変化させることができる。
 

2.心理学的現象を知る

 交渉とはやりとりを進める中でお互いの理解を深めたり、条件の出し合いなどで合意に向かって行くものという認識を持っていた。しかし、そもそも交渉のスタート時に相手の考えを操作できる方法が存在していた。「アンカリング」である。
本書の大統領のポスターを撮影したカメラマンの話を読んだときはアメリカ政府側の視点では良かったと感じたし、カメラマン側の視点ではとても勿体無いことになったと感じた。カメラマンと交渉した選挙対策委員長は写真の使用権と政治献金の両方を獲得しているが交渉のスタートの仕方によってこんなにも結果に差が出ると感じた事例だった。
 これは交渉により変化するというより、交渉スタート時に相手の考えをある程度固定したり選択肢を狭めることができるという驚きの方法である。


3.行動する

 相手へのメリットが提示できない場合の方法は、自分のロマンに基づいた行動をとることである。
株式会社オトバンクの上田さんのように交渉が合意に至らなかった場合の原因を分析して相手のデメリットを少なくするための行動取ること、ディベート大会の支援を受けるために高いビジョンと実現するための方法を言葉で伝えるなどにより交渉相手の行動が変化した事例を挙げている。
 確かにそこまでいうならやそこまでするならと言って相手の主張を受け入れる心情はわかりやすい。


最後に交渉がコミュニケーションである以上言葉は切っても切り離せない。相手を知るためには相手の言葉を理解することが必要であり、自分の意見を伝えるためには相手が理解できる言葉を使えることが必要である。
言葉の持つ力を理解し、言葉を磨く努力を続けていく必要があると感じた。
 
投稿者 kodaihasu12 日時 
交渉とは、相手を説得して自分の主張を通そうとするものではなく、相手の事情を理解してニーズを引き出す、相手に喜んでもらうための双方利益が出るための戦略である。
そのために、自分のロマン(理想)を持ち、それに魅力を感じる賛同者による出資(ソロバン)の両方を持ち合わせた上での戦略的思考が必要になる。

例えば、面接という一見面接官が応募者の採用の可否を判断するものであっても、応募者から自分を採用するメリットをアピールをすることで、面接官に対し、応募者の方が有利な立場になる可能性もある。今述べた面接やスタートアップ起業に出資を検討することなどは、まさにロマンを語る応募者に魅力を感じる面接官がソロバンをはじくものである。

一方で、複数人で昼食を取るような小さなものから、スケールの大きいものまで、交渉は全ての相手との接点に関わってくる。
その際、複数の選択肢を持つことが重要である。交渉相手同士が複数の選択肢を持ち、それぞれのメリットデメリットをトータルで考えて最もベターな落とし所を探るという方法は、企業同士の合併や外交交渉でも用いられている。
そのためには、最大多数の最大幸福という多数が幸福であれば、1人が不幸になることをやむなしとはせず、主要な人物を軸に全員がベターになるのことが理想である。
戦略としては、個々の事例により異なるが、
・問題点を明確にすることで炎上を防ぐ
・共通の敵を作り共同戦線をはり一つずつ解決する
・ラポールを作ることで人間関係を信頼関係にしてから物事にあたる
などについては、様々な場面で組合せも含めて活用できる。
また、自身の成長をおそろかにしてはならない。相手のことを十分に研究し、相手の出方を伺うとともに、自身の影響力やスケールのでかさ、権謀術を使ってでも有利な条件を模索するためにあらゆる可能性を探っていく必要がある。

相手が圧倒的有利でも交渉によって、対等もしくは自分が有利にすることさえ可能である。
著書では、誤って事前許可を得ずに既に大量発注済みのチラシ写真を撮影したカメラマンに対し、事実を伝えるのではなく、多くの候補者の中に残っているという言い方で、本来謝罪や相手の判断になるべきところを自分の方がコントロールするように話を組み立てている。話の内容が双方にとって納得いくものにすることこそが、交渉の最も中核となるところである。

なお、交渉で最も有利になるのが、新しい仕組みやルールを作れば良いということで、欧米がオリンピックルール改正を行い、自国と運動神経で近しい国々と共同戦線を張り、前提となるルールを変えるということがある。この際、現在ではアメリカを味方につけておくことで、有利に働くことは言うまでもない。

交渉とはルールを作ることで自由を最大化しようとするものであるが、ただ自由であるだけの場合、人々は不安になるだけで、縋るものを必要とする。制約のある状態の中で、他者と会い入れることで自由がより一層引き立つのだ。
 
投稿者 aguroig 日時 
 本書を読了しての第一印象は交渉とは何をすることなのか、が明確になったことです。何かを達成しようとした時、必ず誰かの助けや協力が必要になります。いくら志が高くても、自分ひとりだけでは大事を成すことは難しいでしょう。そこで必要となるのが交渉力なのであることが分かりました。
 本書では、交渉とは相手と自分の双方の利害関係を分析して、調整することで合意を目指すことだといいます。必ずしも、自分の主張や意見を強引に通すことではないともいっています。
 では、上手く交渉を成功させるには、何が必要なのでしょうか。

 交渉には5つの考え方が必要だといいます。
 一つ目は、相手のメリットを考えることです。誰しもどんなに素晴らしい夢でも、自分のメリットにならないことにはお金を出したくないものです。具体的なメリットを提示できる提案にはお金を出してくれるというものです。
 たとえば募金活動で単に募金してくださいだけでは訴求力がないのですが、あなたの100円の寄付でこれだけの命が助かりますよと具体的に言われれば財布の紐も緩むものです。
 自分が困っているから助けてほしいではなく、相手の立場に立って、私を助けるとこういうメリットがありますよ、と提案することで受け入れてもらえるハードルはかなり下がります。いかに相手のメリットとなる提案ができるかが、交渉成功の一つのカギとなるのです。
 確かに、当たり前のことだと思いますが、自分事となるとなかなか実践できない。考え方は理解できたので、あとは経験あるのみです。
 
 二つ目は、相手の主張をどれだけ聞けるかです。完全に主張がぶつかっているような問題でも、お互いの利害関係を分析すると、各々の要求を満足する解決案が出てくることがあります。
各々の要求を引き出すには、相手が欲しものは何か、妥協してもいいと思っているものは何かを見極めることです。本書では姉妹のオレンジ取り合い問題が例として挙げられていて分かり易かったです。
 実際にはこんな単純な利害関係は稀でしょうが、交渉術の考え方としは全くその通りだと思います。交渉は奪い合いではない、勝った負けたでもない、双方の利害関係が完全に対立していない限り必ず落としどころがある、というのはその通りであると思います。ただ、その落としどころを見つけるために根気と忍耐が必要かもしれなませんが。

 三つ目は複数の選択肢を持つということです。交渉に挑む時はより多くの選択肢がある状態にしておく必要があります。
交渉の時に最悪なのは選択肢が1つしかないことです。そういう状況だとこちらに不利な条件でも妥協せざるを得ず、交渉は失敗に終わります。つまり交渉は事前にどれだけ多くの選択肢を持った状態にできるかであり、そのための事前準備が重要であるということなのです。
 これも言われれば当たり前のことで、交渉の場での交渉術や交渉テクニックもありますが、交渉は事前準備が全てと言っても過言ではないかと思いました。

 四つ目は、交渉はスタート地点で決まるということです。最初に途方もない条件を提示することで交渉相手の認識をコントロールする手法をアンカリングというそうですが、交渉相手によっては有効な手段です。どんなに法外な条件でも、一旦提示されるとそれを基準に考えてしまうという人間心理を突いていたものです。これはトランプ元大統領もよく使っていた手法だと聞きます。最初にワザと無理筋条件を突き付けて徐々に譲歩するというやり方です。これは有り体に言えばハッタリです。
アンカリングのポイントとして、できるだけ高い目標を設定することだと言われていますが、あまり吹っ掛けすぎると逆に相手に不信感を抱かせてしまうので、ほどほどというか、相手の懐具合を知ることが大事です。ハッタリをかますにしても事前準備、事前の情報収集が大事だということなのだと思います。

 五つ目は譲歩をうまく使うことです。交渉相手との条件ギャップが大きい時は譲歩の必要が出てきます。
譲歩とは自分の条件を緩和するか相手に別の付加価値を付けることをいいます。ただし、無条件の譲歩は絶対にしない、相手にとっては価値が高いが自分にとっては価値が低い条件を譲歩の対象とすることがポイントになります。
 本書で例示されているのは自動車ディーラーのオプション交渉術です。ディーラーからすればオプションを付けることは屁でもないが、購入者側からすると魅力的な提案に見えるかもしれません。
様々な譲歩条件を提示することで、交渉相手が重要視している判断基準を見極めることが重要であり、相手の譲歩条件、価値基準を把握できれば有利に交渉を進めることができます。逆に、こちらの譲歩条件や価値基準を知られてしまうと不利になるので、要注意です。
ここもやはり情報戦でしょう。いかに相手の内情を探るかです。交渉を有利に進めるには事前準備と情報収集に尽きると言えると思います。

 交渉とは双方の利害関係を分析し、譲歩や主張など調整することで双方納得のいく合意を目指すことです。たとえ自分が交渉相手の弱点を知っていて、優位な状況に立っていたとしても、勝ちすぎる交渉、もう2度とこいつとはビジネスしたくないと思われるような横暴な勝ち方、条件提示はしない方がよいと思いました。
 実際の現場でのビジネス対応でも、自社の利益にばかりに目を向けてしまいがちですが、そういう時は、相手のメリットは何かを常に考えて交渉にあたろうと思います。
 それと、やはり交渉を有利に進めるには情報収集しかないと思いました。交渉の前までにどれだけ詳しい情報を集められるか、交渉相手にたくさん聞いて、より多くの情報を集め、たくさん提案できれば、交渉が合意にいたる可能性が高くなります。情報収集が交渉成功の秘訣だと思いました。
 
投稿者 ynui190 日時 
「武器としての交渉思考」を読んで。

本書は、大学の講義で行っていた内容をまとめた本である。

武器としての交渉思考とはどういうことなのか。
1人のカリスマが時代をけん引、または席巻していく時期はとうに過ぎている。
世の中を変えるため、自分の要望を通すためには、必要な仲間を集め、時には敵との合意を図るためには交渉が必要となってくる。
本書では、『交渉とは「立場が異なり自由に意思決定できる二者が合意を目指してやり取りするコミュニケーション」』(P80)と定義されている。
交渉とは大小があるにせよ、人が集まれば身近に起こる事案だ。その交渉ごとを成り立たせるための思考をここでは武器と呼ぶ。

日常にある交渉を読み解くため、私の場合は仕事でよく起こるクレーム対応を例に考えてみたいと思う。

まず、クレーム対応で一番重要なことは何か。
「相手の話をよく聞き、何に対して感情をあらわにしているのか、どんな要望を持っているのかを理解する。」これに尽きる。
本書では『「相手がなぜそのような結論に達したのか」ということをよく理解することです。』(P81)にあたる。
クレーム対応は、ただ謝罪するだけではない。交渉もただ相手と話すことではない。
多くの場合、相手がなぜ感情をあらわにしたのかという理由と、その上で何をしてほしいのかという要望をもっている。
話し合いから、その理由を探り、要望を提示してもらうことが交渉の第一歩となる。
そして、相手を理解することがもっとも重要なこととなる。
もちろん、最初に要望を聞いた時にとても話せる状態ではなく、交渉のテーブルから降り、違う方法を模索する場合もある。
それ故、相手の要望を聞き出し、自分のゴールを照らし合わせることが重要となる。

次に、相手の要望に沿えるかどうかを考える。
全ての要望に沿えることもあるが、全てに添えない場合も多い。どこまで弊社が妥協できるか、相手が一番求めている要望は何なのかを話し合いながら探っていく。
ここでも、全ての要望に沿えるか全く添えないかの二者択一ではない。じりじりと自分の要望を出したり引っ込めたり、違う提案をしながら相手との妥協点を探る。
本書では、『バトナの考え方』(P109)として紹介がある。
その後、合意に至るまでの交渉術は、話し方のテクニックだったり、何度も話し合い粘り強く相手の要望を聞き出すこと、諦めずに提案をすることができるかどうかにかかっている。
本書でも最後は体力勝負という話が出ていたが、まさにそうだ。どれだけ粘って相手と話せるかによる。
交渉とは決裂する場合もあるが、本来は同じ目的を持ちゴールを目指しているのだから、どちらかが諦めなければ話し合いは続けられると思っている。

このように身近な例で整理してみると、交渉は誰でも大なり小なり日常的に起こることだとわかる。
クレーム対応が身近かと言われると人によって違うとは思うが、交渉とは捉えてなくてもそれぞれ大なり小なり話し合いを行っていることは多いと思う。
ただ、それを交渉と呼ぶかどうかの違いだ。

人が集まれば、日常的に何かしらの話し合いが行われる。
ただ、この話し合いで自分の意見をいうことが苦手だったり、話し合いによる摩擦が起こることを嫌い、何も言わないことを選択する人も少なからずいただろう。
これまではそれでよかったのかもしれない。誰かが決めたことに従えばよかった時代、またはトップが決めたことに従う風潮が歓迎されていたのだと思う。
ただ、今は違う。新型コロナウイルスを機に世界は大きく変わった。
対面で会うことが少なくなり、声をあげなければそのまま目の前を過ぎ去ってしまうことも多くなった。ふと気づいたら取り残されていたということにもなりかねない。時代は流れ、その度に風景は大きく変わる。
何が正解で未来がどうなるのかは誰にも分からない。
そんな時、本書で紹介されている交渉思考はとても力強いアイテムとなる。
2012年に発行された本だが内容は色あせず、むしろ今だからこそ必要な内容だとわかる。
VUCAな世界を渡り歩くための一つのツールとして身につけ、自分だけでなく子供たちへその周りの友達へと繋げて行こうと思っている。
 
投稿者 masa3843 日時 
本書は、京大で教鞭をとり、ディベート甲子園の実現にも尽力した著者が、若者が世の中を動かすための必須スキルである「交渉」について解説した本である。私は、交渉が苦手だ。家電量販店では、商品購入時に値切れた記憶がない。仕事で他部署と業務の押し付け合いになった時には、自部署でその業務を引き取ることが多い。そして、妻との小遣い値上げ交渉では連戦連敗だ。本書によれば、交渉の根幹となる考え方は、相手と自分、お互いの利害を分析し、調整することで合意を目指すことだという。そのことを念頭に置いて振り返ってみると、私は本書のP110に書かれている誤った思い込みを持っていたことに気付いた。その思い込みとは、どれだけ強く主張できるかが、交渉の明暗を分けるという考えだ。つまり、どれだけ図々しくなれるかが交渉を成功させる鍵を握ると思っていたのである。そのため、図々しくなるぐらいであれば、交渉を成功させなくてもよいとまで考えてしまっていたのだ。しかしながら、本書で語られる交渉の本質は、相手の利益にこそ目を向ける。そうであるならば、図々しくなる必要はない。なぜなら、自分も相手も、利益を得ることができるのだから。本稿では、相手の利益に焦点を当てる「交渉」において、相手方と合意を得る秘訣は何なのか、掘り下げてみたい。

先に結論から言うと、私は交渉で合意を得るための本質的なアプローチは、「相手が共感できるストーリーをつくる」ことにあると考えた。「ストーリー」というと大袈裟だが、要するに、交渉相手が自分自身と周囲を納得させられる根拠を用意する、ということだ。ストーリーが重要であると考えた理由は、本書5時間目P243から紹介されている気難しい職人の事例を読んだからである。この事例では、交渉人である教授が、一方的に自分の都合を主張しているわけではない。教授は帰路につかなければいけない自分自身の予定については、一切説明していないのだ。そして、交渉相手である職人の希望を、ただ聞いているわけでもない。職人は、未完成の作品を売ることはできず、あくまでも完成後に売りたいと考えていたが、教授の提案は完成品を持ち帰ることではなかったのである。教授は、自身の旅行スケジュールの中で職人の作品を持ち帰ることができるように、「未完成のままでこそ、この作品を売るべきである」というストーリーをつくったのである。こうしたストーリーをつくるためには、交渉相手についてあらゆる面から理解しておく必要がある。中でも、価値観や重視するポイントを理解することが不可欠であり、だからこそ交渉では相手方に焦点を当てる必要があるのだ。

ただ、ストーリーの重要性について主張すると、論理的な交渉相手に有効な「バトナ」や「アンカリング」といった強力な武器の重要性を蔑ろにしていると捉えられる可能性がある。もちろん、どちらも交渉にとっては重要な考え方だ。なぜストーリーにとっても重要だと言えるのか、1つずつ整理してみたい。まず「バトナ」についてである。「バトナ」は、要するに選択肢を持つ、ということだ。複数の選択肢を持ち、目の前の交渉相手以外の選択肢を整理し、それを把握しておくことである。相手に共感されるストーリーをつくるためには、その材料が必要になる。どのようなポイントが相手に刺さるかは、人によって違う。そのため、ストーリーをつくるための材料を集めておく必要があり、そのための強力なツールがバトナなのである。

「アンカリング」についてはどうだろう。アンカリングとは、最初の提示条件のことだ。基準となる条件になるもので、これによって交渉相手の認識をコントロールすることができる。アンカリングは、ストーリーを強固にする役割を持つ。これは、P186のアメリカ大統領選の例が分かりやすい。この交渉人は、「写真の利用を許諾してほしい」という交渉から、「選挙キャンペーンの写真として使ってもらうために、寄附をしてほしい」というストーリーへ転換を図ったのだ。このストーリー転換を交渉相手に無理なく受け入れさせるために、アンカリングを使ったのである。こうしたことから、アンカリングがストーリーを強固にする武器であることが分かる。

このように、ストーリーの重要性について認識した後に本書を読むと、著者も強力なストーリーを描いて、私達に「交渉」を仕掛けていたことに気付く。そのストーリーとは、「世の中に大きな変化を起こすためには、共に戦う仲間と連携しながら様々な利害関係者と合意を結ぶ必要があり、真の交渉スキルが不可欠」というものである。交渉というスキルの有用性について論理的に説明をしながら、交渉思考を手に入れた先に待つ輝かしい未来を見せているのだ。著者は、読者に交渉思考を習得し、実際に行動してもらうことを強く望んでいる。私達読者に行動を促すために、交渉思考がもたらすメリットに加えて、より俯瞰的なロマンを語ることで、未来を変えるストーリーを描いたのだ。私自身、まんまと乗せられてしまったので、世界を少しでも変えていくために、交渉思考を習得し、実践していこうと思う。
投稿者 LifeCanBeRich 日時 
“日々の交渉事に対する姿勢について”

本書の中で著者は、日常生活のありとあらゆるところで、人は様々な交渉を行っていると指摘する。そう言われてみると確かに、家族や友人達との約束事から住宅の家賃や売買、または会社での商取引など、身の周りは交渉事だらけである。言わずもがなだが、取り決め方によって自身の立場が有利にも不利にもなるのだから交渉事は重要だ。にもかかわらず、本書を読むまでの私は交渉を有利に進める方法に関する知識はあまり持ち合わせていなかったし、大した関心も向けていなかった。例えば、日々の交渉事については、只々成り行きに任せたり、周囲の動向に合わせたりするだけというのは珍しくない。友人と食事の約束をする時は、いつ、どこで、何を食べるのかを相手の意見に只賛同したり、不動産の家賃交渉も私自身の立場を有利にするという試みもせず、世間の相場に只合わせたりするだけだったりする。どちらの状況も交渉事であるにもかかわらず、そこに私の意思や意向は殆ど無い。そしてさらに、改めて自身の日々を振り返ると様々な交渉事に対する無関心さが習慣化されていることを自覚する。ここで私の頭の中に浮かんだ疑問は、この状況は、果たして看過して良いものかということだ。

そもそも、上述のように私が交渉事に自身の意思、意向を積極的に表明してこなかった背景はなんであろうか。私は、その背景に日本人的な価値観や文化、慣習から生じる2つの考え方や振る舞いがあると考える。まず1つめが、従来農耕民族である日本人の相互扶助的で、協調性が重んじられるという考え方であり、空気を読むことや意見を周囲に合わせて事を円滑に進める振る舞いを是とするものだ。そしてもう1つが、多くの日本人に根付いている人前でお金のことを話すのは、はしたないとか、金儲けをするのは良くないという考え方である。こうして見ると、上述した私が友人の意見に只賛同したり、家賃設定で世間の相場をただ受け入れたりすることも、それら2つの考え方や振る舞いの表れだとも言える。また、このことは、本書の中の「アメリカ人でないと無理じゃないですか?」(P.179)や「お金儲けを目標にするなんてくだらない」(P.75)という学生のコメントにも表れているように思うのだ。ただ、繰り返しになるが交渉事に私の意思や意向が殆んど無い状況は問題だろう。なぜなら、この状況は、相手や周囲の意見に只流されているだけとも言えるからだ。そして、ここで私の頭の中を過ったのが、『王様と家来モデル』(P.6)である。

著者の言う『王様と家来モデル』とは、「上の立場の人間が下の立場の人間に『このようにふるまえ』と秩序を強要し、下の立場の人間はそれに対して基本的に反論の権利を持たない状態のこと」(P.10)である。そして、高い不確実性、複雑性を伴う時代の変化に対応できないという理由で、『王様と家来モデル』は“組織レベル”において今後崩壊すると著者は主張する。この著者の主張は、日々の会社経営を通して私が実感しているところであり、完全に同意できるものだ。ただ、本書を読み、そして上述の交渉事に対する私自身の考えや振る舞いを顧みると、もしかすると“社会レベル”でも『王様と家来モデル』は、今後崩壊していく、いや、少なくとも私自身の中では崩壊させていくべきだと思うようになったのだ。私の言う“社会レベル”の『王様と家来モデル』とは、王様が日本人的な価値観や文化、慣習であり、家来が私の様な大部分の一般的な日本人である。先で挙げた交渉の例で言えば、王様は協調性を重んじる、お金に対して消極的になる言動を秩序として家来に強要している状況のことである。

この“社会レベル”での『王様と家来モデル』を少なくとも私自身の中では、今後崩壊させていくべきだと考える。なぜならば、無自覚、無思考、無批判に日本人的な価値観や文化、慣習に基づいた考え方や振る舞いをしていれば、これから更に広がるグローバル社会において他の文化と遭遇した時に、それらの価値観、文化、慣習を理解することなどが難しくなるはずであり、延いては交渉事において自らの立場を危うくするに違いないからだ。例えば、今後仕事において、日本人的な相互扶助、集団主義とは正反対の自力救済、個人主義に基づく価値観、慣習を持つ異文化の人たちと交渉することは必然的に起こるだろう。その時に日本人的な協調主義やお金に対する消極主義を通してしまえば、必ず痛い目に遭うと思うのだ。では、どうすれば良いのか。当たり前の答えにはなってしまうが、まずは私自身が日々の交渉事に対する無関心でいる習慣を変えることである。そして、私自身が交渉事において当たり前と思っていることを疑いながら、そして積極的に意思や意向を表明することが始まりだと考える。

~終わり~
投稿者 msykmt 日時 
"事前準備で8割決まる"

願わくは自分が思い描いたとおりに事をなしたい。そのときに、必要不可欠になるが交渉だ。なぜならば、我々は社会性をもった人間であるから、なにをするにあたっても、交渉によって他者と合意形成する必要が少なからずあるからだ。だから、人間として意志をもってなにか事をなしたいのであれば、交渉は必要不可欠なテクニックなのだ。本稿では、本書で紹介されている、交渉におけるテクニックや考え方のうち、特に印象的だったポイントを三つピックアップした上で、その共通項を考えてみたい。

まず一点目として印象的だったポイントは、「相手のメリットを考える」ということだ。人は具体的なメリットが実感できれば、お金を払うなどの行動を起こす。一方で、メリットが実感できなければ行動にうつさない。これは、言わずもがなといった風情があるものの、普段の行動レベルにまで落とし込むのはむずかしい。たとえば、ビジネスの場面で、同僚の人に仕事をおねがいするときに、人にもよるのだが、組織としてその仕事をする目的をその人に説明したとしても、その組織の目的、つまり組織のメリットと、その人自身のメリットに符合する部分がないと、その人はその仕事になかなか着手しない、ということがある。そういうときには、組織のメリットとその人のメリットとの重なる部分を見つけ出した上で、それをその人にていねいに説明する努力が必要になる。このように、相手がなにを大切にしているのか、相手はなにに関心があるのか、という相手のメリットを事前に考えることが、交渉においては必要になる。

次に二点目として印象的だったポイントは、「相手の利害に焦点をあてる」ということだ。本書では、自分の利害に焦点をあてる人々の行動事例をあげながら、それらを「子どもの論理」や「駄々こね」などの言葉で痛烈に批判する。ふりかえってみると、私自身も、ビジネスの場面で「私の立場もわかってくださいよ」という言葉は出さないにせよ、態度としては「自分の立場を理解してもらう」という駄々こねスタンスで顧客や上司に交渉をいどんだ経験が多々あった。たしかに、それらは子どもの駄々こねだったなと反省した。また、練習問題として出されていたオレンジの問題の答えには虚をつかれた。一見すると利害がぶつかりあっているように見受けられても、相手の求めているものがなんであるか、相手の求めていないものがなんであるか、がわかれば、相手と自分との利害がぶつからない答えがどこかにあるのかもしれない。そのために、相手の利害に焦点をあてた上で、相手の主張を事前にどれだけ聞き出せるかが交渉の成否をわけるのだ。

最後に三点目として印象的だったポイントは、「交渉の争点を整理する」ということだ。本書で示されているような、利害関係者ごとの争点を洗い出した上で、それぞれを重み付けするという行為は、私がビジネスの場面でよくやる行為に似ている。それは、ある問題に対して複数の対策案がある場合に、それらの評価項目を洗い出した上で、それぞれを重み付けした上で、どの案を採用するかを決める、という行為だ。どちらも、一見すると複雑にみえる問題を抽象化、要素分解した上で、なにが重要なのかを可視化する、という点が共通している。さらに、本書では、争点を洗い出した後に、次のステップとして、争点間の因果関係、すなわち、どれが目的でどれが手段なのかを明確にする、ということをあげている。これが秀逸だ。そのようなステップをふむことにより、一見すると利害がぶつかりあっているように見受けられる争点は単なる手段にしかすぎず、その手段に対する目的はそれぞれ異なった争点であることが明らかになることがある。そうなれば、おたがいの利害がぶつかりあわない他の選択肢を見出すことができるのだ。このように、交渉の前に、交渉の争点を整理することは、おたがいの立場の違いを尊重することにつながるため、他の選択肢を探るための強力な武器になるのだ。

以上の三つのポイントから私が思いついたキーワード、それは、「事前準備で8割決まる」ということだ。これは、本書で「バトナ」を説明している章のうちの、小見出しの一つではあるものの、本稿であげた三つのポイントに通底する考え方だ。つまり、相手のメリットを考えるのも、相手の利害に焦点をあてるのも、交渉の争点を整理するのも、交渉の瞬間にではなく、交渉のテーブルにつく前の段階で実施することにより、交渉の成功に大きく寄与するということだ。したがって、これからは、自分が思い描いたとおりに事をなすために、他者との交渉の前には、相手のメリット、相手の利害、交渉の争点を整理した上で、交渉にいどみたい。
 
投稿者 kzid9 日時 
交渉におけるスキルとは年代、性別、社会階層、地域、職種、属している文化圏など、価値観の全く異なる人とも交渉により合意できることをいう。そして、交渉は特別なシーンだけで必要なものではなく、おこずかいを上げてもらうといった日常生活やビジネスにおける価格交渉など、あらゆるシーンにおいて役立つ万能で最強のスキルといえる。だからこそ、交渉はこれからの時代を生き抜くために必須のスキルといえる。以下に、その理由を述べる。

なぜ、これからの時代において交渉のスキルが必要になるかについえ述べる。一つには、これまで有効に機能していた既存の社会の枠組みが崩壊もしくは機能不全に陥ったことが挙げられる。具体的は、これまでは安泰とされていた大企業であったJALやエルピーダメモリの倒産やシャープが外資系の傘下に入るなどの凋落ぶりを示す事例は枚挙にいとまがない。つまり、これからは、既存の組織に頼らなに生き方が必要になってきたということだ。

たとえば、情報発信を例に挙げる。これまでは情報発信と言えば、新聞社、テレビ局、ラジオ局、雑誌といったマスメディアが情報を独占していた。情報を発信しようと思えば、いずれかの企業の属するのが一般的であった。また、マスメディアの特性として画一的で一方向からの発信であることが言える。

これに対して、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムに加え、You Tube、TikTokといったようにソーシャルメディアといわれる個人からの情報発信が広まりつつ有る。そして、ソーシャルメディアの特性は双方向発信であるといえる。

以上のように、情報発信のあり方一つをとってみても大きく変化していることが窺い知ることができる。また、以前、課題図書でも取り上げられた「ティール組織」(従来の組織論に当てはまらない次世代組織)の定義によると、これからの組織は、命令がなく中央からの指揮や統制がなく、メンバーそれぞれが自律的に協働して常に進化を続け、メンバー同士の相互信頼で組織を維持しているとある。ようするに、次世代のそれは独自に考え、個々がそれぞれにしっかりと考え、価値観が違うといった異質なものを受け入れながら、話し合いを重ね意思決定を行うことで成り立つ集団だといえる。つまり、情報発信の型でいえばソーシャルメディアの型であると言える。

次に、二つ目の理由として、異質なものを受け入れ手を組むことでイノベーションを起こすことが期待できることである。本書では、徳川幕府時代の薩長同盟を例に挙げ、交渉のスキルにより異質なものと手を組むことでイノベーションを起こすことができるとことについて述べている。そのために必要なのが自分の頭で考える決断思考であり、小さな集団が一つの目的のために仲間と手を結ぶための合意を作り出す手段が交渉思考である。その一方で、自分たちの外部にある異質なものとの対話の通路を閉じる組織はガラパゴス化し自滅している。つまり、変化することを前提としなければならないということだ。積極的に異質なもの自分とは前提とする考え方や文化的な背景が全く違う人と交流し、仲間になることを戦略的に行うことが求められるのである。その際に、相手が何を望んでいるのか相手の立場に立って考えることや譲歩するといった本書に書かれている交渉におけるスキルが必要となるのである。

このように、既存の社会の枠組みが崩壊もしくは機能不全に陥り、寄らば大樹の陰といったことが通用しなくなってきている。さらに、異質なものを受け入れ変化を前提とした生き方でなければイノベーションを起こすことができない。つまり、人生を選択的に自由に生き抜いていくためには自分で考え、交渉することにより自らの手で勝ちとらなければならない。そのため、交渉はこれから生きていく上で避けて通ることのできない必須のスキルであり、戦略的に身に着けていきたいと考える。
 
投稿者 vastos2000 日時 
本書を読んだことで、私の持つ「交渉」ということばの定義が書き換えられた。本書を読む前までは、交渉と聞くと、p5に書かれているように企業間のビジネス交渉を思い浮かべていた。書名から想像したのは、ビジネス交渉の場面や就職活動などの場面で役立つ交渉術のようなものを教え説く内容の本だと思っていたが、大部分は「交渉」ということばのイメージを一段か二段、レベルを上げるようなものだった。

本書は大学での講義がベースであるためか、若者に向けたメッセージが中心になっていた。
“世の中を動かすためには、自分ひとり力ではとても足りない。ともに戦う自分たちの「仲間」を探さねばなりません。(p34)”
20数年社会人として組織の中で働いている身で、この記述に対して思うことは、“世の中も会社(学校)も同じだ“ということだ。
数人で構成される小さな組織はともかく、10人以上が所属するような組織に対しては、一人の影響力はたかが知れている。自分と目的をともにする仲間がいなければ、世の中や会社を動かせない。(仲間がいても動かせるとは限らないが)
だからこそか、著者は読者に「コモディティ」になるなと説く。

“「今後、付加価値を持つビジネスはすべて交渉をともなうものになる」と考えています。(p65)” 
“これからますます「誰にでもできる仕事」の価値は下落し、どんどんコンピュータに取って代わられることになるでしょう。(p70)”
上に引用した二つの文のうち、後者は特に実感がある。
現在、職場で私が課せられたミッションに、情報システム導入による業務の省人化がある。人件費を下げるため、定年等による欠員補充は極力控えて、情報システム導入などでカバーできることは機械(コンピュータ)に置き換えていこうという動きがある。
その中でワークフローシステムやRPAなどの商品を吟味しているが、その進歩はすさまじい。「こんなことまで自動化できるのか」と思うことがよくある。
そして紙からデータへの流れも止まらない。再来年には電帳法改正に対応しなければならないが、今後物理的な申請書や伝票は減っていくだろう。そうなるとそれらを運ぶ人手も不要になる。もちろん申請書や伝票はその形よりもそこに記されている内容のほうが大事だから、電子データでも事足りる。
そういった業務の効率化の先で生み出されたマンパワーはどこで発揮するべきなのか?
著者の主張では人対人のコミュニケーション(交渉)ということになる。私はこれには反対しない。損得の計算は、正しいデータがあればコンピュータにも「計算できる」かも知れない。だが、交渉相手がデータにないことを提示してきた時に正しく計算できるのだろうか?

他にも人間が関わるだろうと私が思うのは、「0から1の新しいことを生み出す局面」だ。これは(今のところ)コンピュータ・AIよりも人間のほうが得意とすることだろう。この事は今までの課題図書などを読んでいて強く感じることだ。

そして、本書のテーマである交渉だが、本書を読んであらためてハッとしたのが次の一文。
“交渉では、「意志決定する人間が相手と自分の2人いる」こと、そして「その両者が下す判断が同じ結論にならなければいけない」ところが、「指令」とも「ディベート」ともまったく異なる点となるわけです。(p105)”
この文の中の“両者が下す判断が同じ結論にならなければいけない”という点が、言われてみればそうだけど、意識していなかった点だ。
今日も仕事で契約書に判を捺したが、この契約も我々と先方が「この価格、この工期」と合意したから契約締結となったのであって、どちらかが「この条件は飲めない」となったら交渉決裂となっていた。
著者は“大事なのは、自分の立場ではなくて、相手側のメリットを実現してあげること。そのうえで自分もメリットが得られるようにすることです。(p131)”と言うが、私は少し違和感を覚える。相手側のメリットは大切だ。それと同じように自分側のメリットも大切だ。最終的には自分もメリットが得られるようにすると言っているが、両者は基本的に同列ではないだろうか。
一人(一社)に一度売ったら終わりの「コンチハ・サイナラ」型の商売であれば、自分のメリットを中心に考えればよいだろうが、そんな商売は長続きしないだろう。新規顧客を開拓し続けるのはずっと続かない。
逆に、リピートが発生する商品や年会費などが発生するような、『顧客を維持する型の商売』では、自分と相手の双方のメリットがポイントになるだろう。
だから、“みんなで小っちゃいパイを取り合って平等に不幸になるより、パイ全体を大きくする工夫や努力をすること。(p263)”と繋がるのではないだろうか。

最後に著者は、“私が本当にひとつだけ、これだけはみなさんに覚えておいて欲しいということを明記するならば、それは「言葉こそが最大の武器である」ということになります。”
と書いているが、これは、面と向かってのコミュニケーション(交渉)においてもそうであろうし、文書による発信やコミュニケーションにおいてもそうだろう。

そう感じるのは、私は課題図書の感想文を書くようになってから、自分の発する言葉や自分が書く文書の言葉に、以前よりも気をつけるようになった。同時に、他人が発する言葉に対しても、注意の量が増えた結果、相手の言葉を聞きながら「それはこういった方が伝わりやすいのに」とか、「その言い方は書き言葉としてはNGだけど、話し言葉としてはわかりやすいな」と思う機会が増えた。
これは、アウトプットを続けてきた効果だし、その成果が発揮される機会がすぐそこに迫っていると感じる。現行の形式での感想文は今回が最後となるが、7年に渡って毎月課題図書に取り組んで来たことは確実に私の力となった。
その成果はまだはっきりと目に見える段階にないが、結果を残すことができたら、皆さんに報告するつもりでいる。
今はこの場を借りて、しょ~おん先生はじめ、お付き合いいただいたみなさまに御礼申し上げたい。
今までありがとうございました。
 
投稿者 wapooh 日時 
【202209月課題図書】武器としての交渉思考を読んで

 先月と今月は、それぞれ大学の講義を一冊の本に著したものだ。
自分は入社して25年が経過し、定年退職まで15年の身となった。
 会社も成長し、新入社員の中に東大をはじめ旧帝大や名門私立大学の学生が入社する割合が高くなったのが、ここ10年。
この10年以内に入社して、自分が職場で共に過ごした若者の質が劇的に高まっていて、「思考力・報告力・プレゼンテーション・ITスキル・作業スピードと効率化・生産性、人を巻き込んでリーダーシップを発揮して課題を解決する組織力及び創造力、仕事だけに偏らない家族計画含めて中長期的に考えられた人生設計(ワークライフバランス)もしっかりしているし、さらに性格が良い、品がある」と感じさせられたことが何度もあった。
自分が若者であった随所に視野の狭さや思考の浅さ、遊びの狭さ、長期目線での思想がなかった、若気の至りを尽くしたころとは全く違うのである。

Y、Z世代と言われる彼らが大学で受けてきた講義であり、1年かけてじっくりと教育を受けてエッセンスを習得してきた彼らと言う事ならば、さもありなんだろう、と納得をした。

ここに書かれている様々な交渉問題に対して、ある程度「そうそう。瀧本氏のようにうまく説明は出来ないが、エッセンスは理解しているし、似たような環境について経験済みもしくは想定した課題であったり、何なら実践している」と心理的な余裕をもって言えているならば、私は大人であり後進を同じような気持ち・目線で育てているエスタブリッシュ層である。。。と思うのだが、現実は・・・俯いてしまう。

「武器としての交渉思考」
AIに仕事が奪われると言われた近代、コロナ禍で新たな様式でビジネスを継続し売り上げを落とさず成長させていく時代に、生き残る仕事は「交渉を伴う仕事」だけと書かれている。人生を、自分と時間と空間を共にする人々のいる社会をよりよくするために、幸せにするために、学生は瀧本氏の講義を通して「交渉」について、定義を教え、例題を解くことで様々な考察により、選択肢を認識し学習し、スキルを磨く。
本書を読みながら幸せについて考えると、人が人生を享受する要素とも考えたのだが、自他共の選択の「自由」と自分で選んだ結果への納得度であるに思えた。瀧本氏は資本主義社会で生きる上では、お金が十分にあるかないかで「自由の範囲がかなり変わってくる」と言い、学生にお金を得る経験をさせたりもする。
交渉が成立時点もその後の将来にわたっても、自分も相手も得をしたという納得領域に到達するための、様々なケーススタディを学生は経験する。また、学生が卒業し社会でビジネスや活動を行う際に、迷わぬよう、例えば交渉相手を6タイプに分けてタイプ別の対処法を教授している。もう若者ではない教育を受けてこず良く考えてもいなかった自分は、瀧本先生の講義を通して、瀧本氏の言葉によって「交渉」を理解し、過去の経験を体系的に整理すること、明日からに備えることができた。自分の失敗も再構築して血肉とし、これからも続く人生の局面の中で活用するしかない。残り15年、そのキャリヤの人間として貢献できることを深めて自分を高めていくことで得られる楽しさを思い描きつつ、後進や家族とも同じ言葉を語れる年寄り仲間として時間を共にして行くと意識していく。

本書で楔を打たれているこの一文『しかし私が本当に一つだけ、これだけは皆さんに覚えておいてほしいということを明記するならば、それは「言葉こそが最大の武器である」と言う事になります』は、この課題図書感想文を通して実感させられることであるし、ビジネスの経験を重ねるほどに、人生で多くの方と関わることで痛感する原理だと思う。
ただ、「言葉」を知るだけでは不十分で、言葉を使い思考し表現する「読解力」と自分を理解させるための「表現力」は本当に大切だ。
しょうおんさんが仰る通り、人として磨き上げれば上げるほどに「通じる言葉」を理解し発せられるスキルがないと自由も選択肢も、そして幸せを感じる奥行きも広さも浅くなってしまう。
纏まりのないものになってしまったが、ここ2冊は読書を通じて人生を変えるということの礎について考えさせられ感じさせられるものであった。
また、ここで優秀賞を当たり前のように獲得される方々の両スキルの高さに触れることが出来、本当に刺激を受け血肉としたい、磨いていきたいと思えてならない。
課題図書感想文という場と機会を作って下さり、有難うございました。
 
投稿者 sarusuberi49 日時 
本書は、これからの日本を背負って立つ若者たちに向けて、熱いロマンと壮大なビジョンを持ち、大胆なチャレンジで社会を変革するための交渉術を伝授した大学の講義が元になっている。筆者によれば社会において、ルールを作る側に立てるか、ルールに従う側に甘んじるか、その分水嶺となるのが交渉力であると説いている。未来へ向かう若者たちへ著者が授ける交渉術は、確かに強力な武器になり得る。しかし、どんなに殺傷力の高い武器であっても、扱う側の力量によっては全く役に立たない無用の長物に成り下がってしまいかねない。本書の場合、武器を取り扱う側としての読者に求められる基礎体力は、相手の大切にしている価値観を探り当て、相手に十分なメリットを提示できる言語化力である。そのために、交渉相手の心情を推し量り、微差を判別するための日本語力を磨く必要があると言える。ゆえに私は本論において、交渉思考の基礎となる言語能力について考察しつつ、必要な日本語力を身につけるための方策についても論じて行きたい。

本書を通して考えた、交渉思考に必要な言語能力とは次の2種類である。1つ目は、自分の属する世界の言語能力である。自分自身で決断し、夢やビジョンの源となる自身の軸をしっかり立てるためには、土台としての言語力が必要となる。また、組織を動かすには自分一人では足りないため、志を同じくする仲間を探し出し連携する必要がある。そのためには、ディベートのような切れ味で相手の主張を論破することは時に逆効果である。人は理屈で理解し、感情で決断する生き物であると言われることからもわかるように、相手に心の周波数に合わせたレベルの語彙力、表現力も必要となるのである。

2つ目とは、外部世界の言語能力である。例えば国内で使われる日本語であっても、ジャーゴンと呼ばれる所属集団ごとの言葉があり、これが外部世界からの参入障壁となっている。タコツボ化したコミュニティーは同じ言語と価値観を共有するメンバーばかりの居心地の良い世界ではあるが、ここから抜け出し、自分たちとは異なる外部世界のメンタリティーや文化を理解できなければ、交渉のテーブルにつくことすらおぼつかない。外部世界の言語を学ぶには、まず自分の属する世界での言葉の使い方を十分にマスターする必要がある。何故ならば、外部世界の言語とは、専門用語にとどまらない。類似性やドレスコードまで多岐にわたる要素が含まれる。ゆえに、微差を判別し再現性を確保するための、繊細な言葉の感性が必要と考える。

このようにして著者は、20代、30代の若者たちへの期待を込めて本書を書いている。しかし、中高年世代の我々こそ、豊かな人生経験を踏まえた、多様な言語力を磨くべきであろう。何故ならば、本書には言葉が及ぼす力の凄まじさが示されている。さまざまな言葉を自在に使いこなすことができれば、大統領にもなれるし、政府を倒すことも可能になる。体力が年齢とともに衰えたとしても、言語能力の貯金は年を経るごとに高めて行くことができるのではないだろうか。言葉は身の回りに当たり前に存在していて、普段は意識することもないが、それがゆえに密やかに大勢の人の心を揺り動かし、感動や喜びを与えることができる。その一方で人の心を誘導し、巧みに操ることも出来てしまう。本書では様々な交渉術のテクニックが紹介されていているが、いかなる交渉をするにあたっても、その思考には言葉が用いられている。結局、交渉力を磨くためには日本語力に磨きをかけ、鋭く研ぎ澄ませる必要があると言える。

そんな日本語力を高めるトレーニングとして、私の考える方法は2つある。1つ目は、良質で骨太な文章や、自分にとって難易度が高めの書物を読んで語彙力と表現力を学び、自分の不足を補うことである。2つ目は、文章を自身の言葉でアウトプットすることで実力を客観視し、謙虚に先人との差分を感じ取ることである。ラクではないが、このような日本語力の筋トレの継続の上に成り立つものこそが、使える武器としての交渉思考であると言える。今月でこれまでの課題図書が終了し、来月からのハイレベル化が告知されている。急速な時代の変化を考えれば、今こそ必死で日本語力の強化に取り組まねば取り返しがつかない。その一方で、毎月の課題図書の投稿を、今後の人生のあらゆるフェーズで効力を発揮する、交渉力の基礎鍛錬と考えれば、これほどにリターンの大きい将来の投資はない。ともすれば怯んでしまいそうな弱気を排除しつつ、これからも進歩向上を目指してゆきたい。
 
投稿者 mkse22 日時 
「武器としての交渉思考」を読んで

本書は、著者が行っている京都大学での交渉の授業を本にしたものだ。
交渉は説得手法やビジネススキルの1つではあるが、私が興味をもったのは、それを学生に教えている点である。学生に教える理由は、交渉がものを考えたり、新しいルールを作るために有用な手段であるからだ。交渉ときくと、外交官が自国の利益のために外国とやり取りや警察官が犯人を説得するだけものではない。実は身近なものだったのである。

本書で最も印象に残っているのは、ロマンとそろばんだ。こちらを題材に少し考えてみたい。
まず、ロマンとは目標のことで、そろばんとはその対価、具体的にはお金や時間のことを指す。目標を実現するために、どうしてもお金や時間が必要のため、その間の調整をするのが交渉であるというわけだ。お金がなくてもひとりで実現できる目標であるなら、本人の気持ちのみで何とかなるかもしれない。ところが、周囲の力を借りる必要のあるなら、まずは目標に対して共感してもらう必要があり、さらには、お金を払うことも検討しなければいけない。相手を動かすためには、共感のみでは十分でなく、お金などの対価を与えないと、継続的に協力してもらうことは難しい。
その例外は、やりがい搾取だ。本書にも記載されているとおり、やりがい搾取とは、目標への共感を通じて、対価なしで相手の時間やお金を奪うことをさす。
やりがい搾取はお金儲けに拒否反応を示す層、例えば学生や若い社会人がターゲットになりやすい。反対に30代以上はターゲットにしにくい気がする。なぜなら、かれらはそろばんに重きを置きすぎていると感じるからだ。私も含めてだが、社会人経験が長くなると、どうしてもお金を判断基準の中心にしがちだ。この仕事の対価は〇〇円だから引き受けるといった感じである。そこには、ロマンが欠落している。そろばんが初めにありきなのである。ロマンがお金稼ぎとなっているというべきかもしれない。こういったタイプはお金さえ払えば動かすことは可能だか、割に合わないと感じるとすぐにやめてしまう。目標がないので、続ける動機が弱く、少しデメリットが増えると見切ってしまうからだ。

このようにロマンを追い求めるとただ働きをすることになり、そろばんを追い求めるとロマンの全くない生活となってしまう。ロマンとそろばんにはトレードオフの関係があるわけだ。

それでは、このトレードオフを打ち破ることはできないのだろうか。
打ち破る方法の1つとしてロマンとそろばんを別々の土俵に上げて比較しないことを考えてみた。

最近、私は転職を考えていたので、この件を例に考えてみる。
現在の職業はSEで主に常駐先で勤務している。現在の会社では年収がそれほど高くないにもかかわらず、精神的肉体的にもきつい現場が多くなっている。例えば、体調不良者が続出している現場や、月の残業時間が50~100時間が普通となりつつある現場である。きつい現場で働かないといけない理由は、業界平均の単価では会社として利益がでないからだ。高単価の場所を探すと、どうしてもリスクの高い現場ばかりとなってしまう。
そこで転職をしたいのだが、現在、40歳を超えているため、まず未経験の分野だと年収がさがってしまう。実はSEではなくプログラマになりたかったので、そちらの方面でも仕事を探したのだが、未経験のためどうしても年収が100万単位で下がってしまう。これでは生活ができない。まさに、ロマンとそろばんがトレードオフの関係となっている状況だ。

そこで、このトレードオフを回避するために、本業だけでなく副業をすることにした。本業ではSEを続ける予定だが、これまでのような客先常駐ではなく、自社内で勤務する社内SEを選択した。常駐SEより社内SEのほうが年収は下がりがちだが、納期がある常駐SEではないため、仕事上負荷はさがるとおもったからだ。そして、副業でプログラマとして働くことを検討した。
本業と副業で重視する点を変えたわけだ。本業ではそろばんを、副業でロマンを重視した決断である。こうすれば、そろばんとロマンがトレードオフになることはない。ただ、休日が減るという意味での新たなトレードオフが生まれそうな気はしているが、比較的小さいデメリットのため、まず問題は解決することはできたと思っている。
ただ、どうしても自分の中でもやもやした気持ちがある。なぜなら、トレードオフの問題を真正面から受けたわけではなく、そこから逃げたような感じがするからだ。
なぜ、本業でロマンとトレードオフを打ち破ろうとしなかったのかと。土俵をずらすことは卑怯ではないかと。こういった感情が湧いてくる。

この気持ちを突き詰めると、自分のプライドが高いことが原因だったのかとおもっている。本来このくらいはできるはずだと思っていたことができなかった。この事実を正面から受け止め切れていなかったことに気づいた。非常に良い勉強をさせていただいたと思う。
 
投稿者 H.J 日時 
交渉術じゃなくて交渉思考?
本書のタイトル「武器としての交渉思考」を見た率直な感想である。
この時点で交渉の仕方ではなく、交渉をする際の思考方法について述べた書だということがわかる。
変化が早い時代では術や仕方といったノウハウは時代遅れになる可能性もあるが、思考法であれば変化に合わせて柔軟に対応が可能になる。
加えて、人によって成し遂げたいことも状況も変わる。
そこに人が成功したノウハウが必ずハマるとは考えにくい。
だからこそ、ノウハウではなく思考法を伝える方法がある。という著者の考え方が解るタイトルである。
この考え方は、本書6時間目の章の【自分自身の「宿題」をやろう】にも記述されている『大切な問題は自分で考えて決断すべきだ。』という言葉からも読み取れる。
大切な問題は自分で考えて決断すべきであり、それは何故かというと未来は誰にもわからないのだから、答えではなく思考法を教えることしかできない。そもそもそれは君の宿題なのだから。
という感じに通訳してみると、しっくり来る。

さて、本書の内容に移ると”交渉”がテーマである。
ここで言う”交渉”とは本書に則って言えば、現実を動かすために複数の人間が話し合うことを指す。
そして、”交渉”の役割はロマン(大きなビジョンや成し遂げたい未来の目標や野心)とソロバン(ロマンを実現するためのコスト計算)を繋ぐものである。
その交渉により合意を結び、仲間を探し、世の中を変える原動力となる。
それを続けることで、いずれ世の中を変えることもできる。という著者のメッセージにも感じ取れる。
そのためには、前述したとおりノウハウではなく思考法を使い、自分自身の宿題を解いていく。
その積み重ねが大事な要素である様に感じる。

ここで本書を著者と読者間の交渉と仮定した場合、著者にとってのロマンとは何だろうか?
そんな問いを立ててみた。
なぜ、そんな問いを立てたかというと、例えば印税が欲しい等の私欲で出版しているのであれば、交渉思考ではなく交渉術というタイトルで出版した方が効率が良い様に思ったからだ。
本書を読む限り、名刺交換を求めるほど著者に近づきたい人は少なくないように感じる。
そして、その人たちは直接的なアドバイスを求めている、つまり思考法より答えを欲しているのだから、交渉術というノウハウを伝えた方がニーズに合ってると言える。
それにノウハウ本の方がライト層にもウケるだろう。
しかし、そうせずに”交渉思考”としたからには、何らかのロマンが著者にあるのでは?と思ったからだ。
では、その答えはなんだろうか。
私の考える著者のロマンは、本書6時間目の章の【小さな交渉が「道」をつくる】で『私は、ぜひ本書を読んだ人の中から、21世紀の「塩の行進」を歩き始める人が出てきてほしいと願っています』と述べている部分だと思う。
塩の行進とは、昔のインドでガンジーが行ったイギリスへの抗議活動であり、同じ志を持つ数十人で歩き始めたことが最終的に数千人の同志を集め、その結果植民地支配から解放することとなった出来事である。
つまり、例え小さなことでも始めてみて、その道が後々多くの人が歩くことになる。
そのきっかけが本書で語られる交渉思考であれば、それほど嬉しいことはない。
大袈裟に言えば、こう読み取れる。
そして、そのロマンを実現するのはソロバンであり、そのソロバンを用意するための思考法は本書に書いてある。
あとは読者の行動だけが唯一合意となる方法である。
私はそう感じた。