投稿者 mkse22 日時 2021年11月30日
ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式を読んで
「問題を解くより発見することに価値がある」
これをビジネス書で読むとは思っていなかった。
なぜなら、これは研究の世界でのみ当てはまる話だと思っていたからだ。
研究の世界では「問題を見つけるのが1流、解くのが2流」と言われており、
問題がみつかれば、それを解決するために新しい分野が開拓されていく。
そのなかでもインパクトのある分野を切り開いた人にはノーベル賞が
与えられるといった感じだ。
この考え方がビジネスの世界でも当てはまるようになると、
これからのビジネス環境はとても厳しい状況になるかもと感じてしまった。
なぜなら、解決すべき適切な問題を見つけることがとても困難だからだ。
具体的な困難の理由は以下の通り。
(1)そもそも問題を見つける能力がない(問題を見つけられない)
(2)見つけた問題が共感を得られない(見つけた問題が不適切)
(3)見つけた問題が実は解決済みである(問題ではない)
まず(1)について。
本書では、問題発見を「自分なりのあるべき理想像と目の前の現実を比較して、
そのズレを見出すこと」、問題解決を「ズレの解消」を定義している。
ここで、気になるのは、自分なりのあるべき理想像を持っていることが
問題発見の前提となっていることだ。
これは逆に言えば、あるべき理想像を持っていなければ、
そもそも問題を見つけることすらできないということを意味する。
この理想像を持つということが、現在日本においては意外とハードルが高い。
なぜなら、今の生活に満足している人が多い気がするからだ。
周りを見れば、安く品質のよいもので溢れかえっている。
例えば、吉野家の牛丼やユニクロの服、格安スマホなど。
これらを利用すれば、一定の生活水準を保ちながらも、生活コストを相当下げることができる。
格安スマホがあれば無料のエンターテインメントを大量に楽しむことができるので、
土日はこれでつぶしてしまう人もいるだろう。
今の生活に満足していたら、現実と理想のズレがないため、
あるべき理想像をもつことは難しい。
次に(2)について。
もし、あるべき理想像を持つことができたとしても、次に問題となるのは
その理想像が関係者全員の目指すべきものであるか否かいう点だ。
良い例は、私欲から生じた理想像だ。
例えば、「私の年収は現在500万だが理想は1000万だ」と考えたとする。
私の家族だったら年収1000万を理想像としてとらえ、現実との差を問題として共感してくれるかもしれない。
しかし、他人は私の年収が1000万であることが理想像というわけではないので、
そもそも問題と見做してくれないかもしれないし、仮に問題と見做してくれたとしても
解決のために私に協力してくれる理由はない。
従って、他人から共感を得られる問題を見つけるためには、私欲を超えた会社レベルや国レベルでの理想像が必要となる。
例えば、本書にあるピーチ・アビエーションのように、会社の理念として「世界平和」を掲げる必要があるわけだ。
最後に(3)について。
もし、他人と一緒に解決すべき問題を見つけたとしても、視点を変えれば、
その問題は実はすでに解決済みの可能性がある。
例えば、私のいるSI業界では、仕事のやり方として、協力会社と一緒に数名でチームを組んで顧客先に常駐し、システムの開発や保守作業を行うのが一般的だ。その際に、問題となるのが、参画メンバーのスキルと単価だ。、高スキルを望むと高単価となるため、これをうまく調整して、単価を抑えつつも一定の作業品質を担保する必要がある。
以前はこの単価と作業品質の調整が問題であり、重要な仕事だったが、今はクラウド技術の導入が進んだおかげで、構築や保守が自動化されてしまい、必要なチームメンバー数が減少したため、以前ほど調整が必要ではなくなってしまった。
単価と作業品質の調整という問題が、クラウド技術導入により、かなり解消されてしまったわけだ。ただ、別の問題(クラウド技術に通じた技術者の不足)は発生しているが。
なお、クラウド技術導入の当初は、導入推進派と反対派でもめていたことを覚えている。
これまで通りのメンバー数でチームを構成したいベンダーが導入反対派にいたような感じだった。
このように、視点を変える(新技術を導入)ことで問題が解決する可能性があり
実は問題ではなかったということも起こりえる。
こう考えると、問題発見はとても困難のように思えてしまう。
しかし、だからと言って、問題を探すことから逃げると、ビジネスマンとしての未来がない。
だからこそ、私たちも研究者も同様に自分の人生を賭けてもよいような
自分だけの問題を追い求めなければいけないのかなと思ってしまった。
今月も興味深い本を紹介していただき、ありがとうございました。