世界がフラットになればなるほど

税金不払い批判は収まるか?アマゾン経済圏に消費税の網

こういうニュースを見ると、世界のさらなるフラット化に税制が振り回されている事がよく分かります。もともと税制というのは各国固有の制度で、よその国がどうだろうが関係無かったんですよね。日本だって私が子供の頃ってこんな感じだったんですから。それにしても昭和49年の最高税率75%って凄まじいなあ。これに18%の住民税が加わると、5億稼いでも3500万しか残らないって事ですから。

これが今では最高税率が所得税、住民税を合わせても50%になっているわけです。その結果なのかどうか分かりませんが日本の財政は赤字が続いているわけです。そしてもうひとつこれは間違いなくその結果なのですが、貧富の格差が広がりつつあると。それなら昔のようにお金持ちにジャンジャン課税すれば良いジャンと思う人がいるでしょうが、これが出来れば苦労はしないのです。それが世界のフラット化という事なんですから。

そもそも日本がなぜ所得税率を下げたかというと、欧米各国が同じように下げたからです。ここにアメリカとイギリスの所得税の推移が出ているんですが、やっぱり昔はスゴく高いわけです。これが段階を経て税率を下げているのが良く読み取れます。それと日本がどう関係するのか?と言えば、かつては関係無かったの。だって税金が高かろうが、その国に住み続けるしか無かったんですから。隣の芝生は青いよなあと思っても、隣の庭においそれとは行けなかった、そういう時代だったんですから。

これが世界がフラット化し、人や情報が世界を飛び回れるようになると(しかも簡単に、安く)、状況が一変します。人々は税金が安いところに移住しちゃうわけです。何も高い税金のところに住む必要はありませんから。そしてこういう税制って高額所得者から徴収する金額の方が、ビンボー人から集めたものよりも多くなるのがフツーなのです。ところがそんなお金持ちの人ほど情報を早く手に入れますし(だからお金持ちになれるのです)、アクションをするのに心的、物理的障害が無かったりするんです。

こうなると行き着くところは国家間の競争にならざるを得ないわけです。他が安くすれば自国もそうせざるを得ないわけです。そうしなければ富裕層がジャンジャン脱出しちゃうんですから。最近でもフランスでそういう事が起こりました。ヨーロッパなんて地続きですから、さらにお気軽に移住出来そうです。そういう競争の結果、日本の税金も安くなり、その埋め合わせをするために消費税(付加価値税)を導入したわけです。

ここまでは個人の話でしたが、同じ流れは法人(会社)にも押し寄せているようです。この記事は日経新聞の有料会員でないと読めないんですが、ヨーロッパ各国で、法人に対する課税を強化する流れになっているんです。特に消費税については、税制を変えて根拠地課税(本社やインフラがある場所に課税するやり方)から消費地課税(買った人が住んでいる国で課税するやり方)へ移行しつつあるんです。冒頭の記事もまさにこれの日本版というわけです。

ここまではニュースの解説プラス毒にも薬にもならない話をしました。ここから毒のある話をします。税制も法律の一部なんですね。所得税法とか法人税法という法律によって規定されているわけですから。これが世界のフラット化によって世界標準のようなものが徐々に出来上がり、各国がなんとなくこれに準じるようになるとするなら(すでに税制はそうなりつつあるという事を前段までに解説しました)、他の法律だってそうなるはずなんです。特に人権や命に関する法律については、徐々に横並びになって来るんじゃ無いかと思います。

具体的には、中国が自国民にやっている人権抑圧政策、言論統制を嫌がって中国のお金持ちたちがドンドン国を脱出すると、最終的にはこういう政策を止めざるを得ないのではないかと思うわけです。すでに中国の金持ちたちは香港、シンガポール、オーストラリア、カナダのような比較的移民の受け入れに寛容なところに絶賛脱出中だったりするわけです。この記事を読むと役人たちが真っ先に逃げ出しているみたいですから。国ってどこの国でも、一部の富裕層、一部の超絶に頭の良い人たちが運営しているようなもので、ビンボーで頭が悪い人たちだけがいくら集まってもまともになる事は無いんです。日本が明治維新後に急成長したのも、当時の知識階級だった武士層と、江戸の頃から資本家だった財閥が設計図を描いて国を育てたわけで、95%の百姓農民はただただそれに振り回されただけだったのです。(残り5%の中にいた優秀な人たちは刻苦勉励してこの上位層に潜り込んだんですけどね)

中国でも金持ちや、頭の良い人たちがドンドン国外に逃げ出すようになると、国力はドンドン低下します。為政者がそれに気付いたらこれは政策つまり法律を変えざるを得ないのです。それが世界のフラット化の行き着くところです。

同時に日本もまた他の国から見たら特殊だと思われている政策、法律は変えて行かざるを得ないでしょう。そのひとつが農家保護であり(これはTPPが進む事によってガラッと変わる可能性があります)、ひとつが医療であり、さらには教育、年金と言った社会保障制度は間違いなく世界標準に合わせようという流れになると思います。

ここのところ「小学生の英語教育」についての議論がやたらと喧しいのも、既に他国でこれが一般的になっているからなのです。その辺りはこのサイトを見てもらうと分かるんですが、日本以外のほとんどの先進国で小学生から英語教育をやっているんですね。これで日本だけがやらないとなったら世界のフラット化に逆行することになるんですから、為政者はやりたくて仕方ないと思います。

そして最後は、刑法に関するところも世界標準化に従って変更があるのかも知れません。もっと具体的に言うと死刑制度がこのまま維持出来るのかという話です。日本人の多くは死刑制度の廃止を求めていませんが、世界の流れは明らかに廃止です。そのうち、死刑制度がある国は野蛮だというプロパガンダが瀰漫して、日本もなし崩し的に廃止するようになるんじゃないかというのが現時点での私の読みだったりします。

世界のフラット化って、ここまで広い範囲に影響を与えるのです。そしてこの流れを止める事は誰にも出来ないのです。

 

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