マンションは止めとけ。

前回、住宅は買うべきか、借りるべきかという話を書いたんですが、今日はその続きです。買うと決めたとしましょう。それはそれでご本人の決断ですからご自由になされば良いのですが、それでもマンションは止めた方が良いですよ。その理由について解説します。

日本はこれから人口減社会に突入します。今から移民を受け入れるというようなドラスティックな政策の変更が無い限り、日本の人口が減少するのは確定した事実です。これはみなさんもご存じですよね。人口が減ればどうなるかというと、住宅が余るのですよ。

郊外住宅地の見えない空き家 NHKニュース

人口減だけではない 日本の空き家が増え続ける理由 

こんなニュースを最近やたらと見かけませんか?これは今の状態です。これからさらに人口が減ると、この状態が亢進するというのは分かりますよね。この空き家問題がどういう状態を生むかというと、中古物件の価格下落だと思います。ものの値段は需要と供給のバランスで決まるわけですから、供給が増えて(空き家、売り家が増えて)、買い手となる人が人口減のあおりで減少すれば価格が下がっていくのは当然の理ですね。

それとマンションがどう関係するのかというと、これが大いにヤバい状態を作るのですよ。人口が減って空き家が増えるというのは何も一戸建て住宅だけの話ではありません。マンションにだって当然のように起こる話です。そして今、マンションに住んでいる人は思い出して欲しいのですが、毎月毎月、「管理費」とか「修繕積立金」という名目のおカネを払っていますよね。これ何かというと、10年に一度、20年に一度という頻度で必要になる大規模修繕のためにマンションの管理組合がおカネを集めて積み立てているんです。これ、空き家の場合はどうなるのかというと、当然所有者に支払義務があるのです。

でも常識で考えて、住んでもいないマンションの管理費やら積立金を気持ち良く支払う人がいると思いますか?例えばそのマンションの部屋を遺産相続で部分的にもらったなんてケースでは、相続人は他のところに住んでいたりするわけですよ。子供が複数いる場合には、人数に応じて均等な権利を相続するわけですが、兄弟でシェア出来るわけじゃ無し、売りたくても買い手が無いしなんて部屋の積立金を兄弟がちゃんと分割して払うと思いますか?しかも管理組合が相続の状況を調べたり出来るわけじゃないので、司法書士などに依頼しない限りこの空き部屋の所有権がどうなっているのかなんて、自己申告が無い限り分からないんです。

その結果、中古のマンションでは管理費、積立金の滞納が問題になるんです。例えばこんな感じ。ネットには色々なデータがあるんですが、一説では38%のマンションで滞納問題があるみたいです。この滞納金って、次の物件購入者に支払義務がありますから、滞納が増えれば増えるほど、この部屋の買い手は減ってしまうという負のスパイラルが発生する事になります。そしてこれは民法により5年で時効を迎えるのです。つまり、5年間逃げ切ったらそれ以前の支払義務が消えちゃうという事です。逃げた人には朗報ですが、逃げられた側つまり管理組合であり、その積立金をアテにしていたそのマンションの住人には悲報ですよね。だってこの積立金って全員がちゃんと支払ってくれるという前提で金額算出しているんですから。逃げる人がいたら予定通りにおカネは貯まりませんから、予定通りの修繕が出来ないという事になり、これがまたマンションの価値を下げる要因になるんです。

もうこの時点で、マンションって面倒だなあと思いますよね。でもさらに面倒な事がこの後に待っているのです。管理費や積立金って結局とどのつまりおカネの問題ですから、残った人が一時金を出すなどの方策で足りない分を補填するという事も出来るわけですよね。気分としてはムカつきますが、そうは言っても自分が住んでいるマンションですから、そしてこれからも住み続けようと思っているマンションですからなけなしの貯金を崩して追加の一時金を払った、これでマンションの塗装や、壊れた共有部分の窓の修理や、ひび割れた壁の補修が出来るぞと思ったら、これがそうすんなりとは行かないんですよ。

これまた民法の規定で、この修繕積立金を使う時には、権利者の2/3の賛成が必要なんです。そりゃオレは賛成するよ、だって一時金まで払ったんだぜ、と言いたいところですが、この権利者には当然のことながらお隣の空き部屋も含まれるんですよ。ちょっと血の気が引きますよね。マンションで空き家率が1/3を超えていると、いまそこに住んでいる全ての住人が賛成してもこの修繕積立金は使えないんです。だって賛成が2/3を超えていないでしょ。って事はこの空き部屋の権利を誰が持っているのかを調べて(これは司法書士や弁護士の職権が必要です)、さらにこの人たちに委任状を作ってもらってハンコをついてもらわなきゃならないんです。

たしかあの部屋は、おじいさんが買ったんだけど、あのジイさんは5年前に死んじゃって奥さんは老人ホームで痴呆症だって言ってたな。あれ?息子が二人いたはずだけどどこにいるんだ?なになに、一人は海外転勤で今アメリカだと?もうひとりは行方知れずで連絡がつかないだと?司法書士におカネを払って調べてもらった結果がこんなだったらどうします?

あるいは別の部屋は住んでいた人が事業に失敗して夜逃げしちゃって、借金のカタにってんでヤクザモノらしい人体の方々がお住みになっているなんて言ったら、だれがハンコをもらいにいくんでしょうかね?当事者には笑えない話ですが、これがマンションに住むというリスクなのです。特に賃貸ではなく分譲で買ってしまうと逃げようがありませんから。

元々マンションのような集合住宅は、行動経済成長期に住む家がない、建てたくても土地が足りないという状況下で建てられたわけです。同じ立地ならマンションの区分所有よりも、一戸建てを買いたいと思うのが人情です。つまり、よほどの好立地でない限り、住宅の空き家問題って一戸建てよりもマンションの方が深刻だとも言えるんですね。マンションを買う前に、これは知っておいた方が良いと思いますよ。それでもマンションを買いたいというのなら、(管理費などが滞納されていない)中古物件を安く買うか、駅直結のタワーマンションのような価値の下がりにくいところ(それはイコール空き部屋が発生しづらいという事です)を狙って買う事をオススメします。

ま、個人的にはそこまでして他の人と壁を共有するような住居に住みたいとは思いませんがね。

 

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