田舎暮らしの手引き その1

田舎暮らしも6年目に突入するとそれなりに知見が増えて来ます。最近では田舎暮らしを始めるにあたって、どういうところに注意したら良いかを訊かれることが増えたので、そのあたりをまとめてみようと思います。

田舎に移住するのと、地方都市に引っ越すのは別の話

東京や大阪に住んでいると都会以外は全部田舎という大きな括りで考えてしまうんですが、ロケーションというのは常にユニークなもので、同じ町でも集落や部落が異なれば住み方は全く違うものになるんです。

私が現在住んでいる町にも昔で言う大字(おおあざ)がいくつもあって、それによって生活の仕方が全然違うんです。例えば私の住んでいる集落には猪がほとんど出ませんが、車で5分走ったお隣の集落ではウリ坊(猪の子供ね)が5匹玄関前に屯していたりするわけですよ。そうなると農作物を作るのだって、猪除けのフェンスが必要になったり、猪が好む作物は作らないようにするとかの対策が必要になりますよね。

気候とかもちょっとロケーションがずれるだけで大きく変わります。私の住んでいるところはすぐ横に川があって、東側が山の麓になっているせいか秋から冬にかけて朝は非常に濃い霧が出ます。お隣の家が見えなくなるくらいですから、非常に幻想的ではあるのですが不便でもあります。冬は8時半くらいにならないと太陽が顔を出しませんからね。こんなのは住んでみて初めて分かったんです。

同じ町でもこれくらいの違いがあるんですから、市町村や県が変わったらライフスタイルは全く別物になると考えた方が良いでしょう。ハッキリ言うと田舎暮らしが上手く行くかどうかは、どこに住むかで8割方決まってしまうくらい重要なんです。

そんなロケーションを選ぶ際に、都会の人がやりがちなのが、田舎と地方都市の混同です。都会以外はみんな田舎でしょ、と考えてしまう人が多いんですが、田舎と地方都市は全く違いますから。田舎というのは田んぼや畑、山に川に湖や海が視野の大部分を占めるエリアで、写真にしたらこんな感じです。

それに対して地方都市というのは、畑や田んぼがほとんど無いんです。確かに東京よりも密度は少ないし、道路も混んでいないけど、でも基本的に人工物しか目に入らないというエリアのことです。こういうところに住むのは田舎暮らしではなく、移住でもありません。こういうのは地方都市へのお引っ越しですから。

これはこれでアリですよ。なんたって住居費が都会に比べて半額とか、場所によってはそれ以下になったり、生活費もグッと安いのが当たり前ですから。でもそれはここで論じる田舎暮らしではありません。このような地方都市から車で30分程度走ると目にする風景を田舎と言っているんですから。

もう少し突っ込んで解説すると、我々が5年前に移住してすぐのことなんですが、駅前の繁華街(つまり地方都市のド真ん中のあたり)にある病院に行ったんですよ。そこで治療の合間に世間話になって、我々が横浜から移住して来たことを知った看護婦さんが、「じゃ、駅前のタワーマンションとかにお住まいなんですよね?」と訊いて来たんです。どんな誤解だ?と思いつつ住んでいる町名を伝えたら、「え?あんな田舎に!」って驚いたんですが、それが田舎です。地方都市に住んでいる人からみても田舎だなと思われるところに住むのが田舎暮らしなんです。

将来、田舎に移住したいと考える人の多くは、イメージの中で田んぼや畑をやっている自分を考えるわけですが、それは地方都市へのお引っ越しでは出来ませんから。だってそこはスケールの小さな都会があるだけで、田んぼも畑も存在しないんですから。

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