旭山動物園にビジネスの本質を見る。

ついに念願の旭山動物園に行って来ました。平日ということもあり、ガラガラなんだろうなと思いながら園内に入ると、今日び平日にこれだけの入園者が集まる動物園があるのか?というくらいのお客さん。そしてかなりの外国人率。ということは、海外にもこの動物園の評判が轟いているということなんでしょう。

入園して最初に目に付いた看板が、このもぐもぐタイム。
もぐもぐタイム

これは何かというと、動物たちの食事時間を公開して動物の解説や、食事の説明をしようという、なんともコロンブスの卵的なイベントで、実はこれが大人気なんですね。ペンギン、アザラシ、ホッキョクグマ、オランウータン、エゾシカにカバなどがエサを食べる様子を見られるのですが、これは百聞は一見にしかずで見てみないと雰囲気は伝わらないかも知れません。私も最初は「だからどうした?」くらいの感じでしたから。

園内最初の展示がペンギン館で、ペンギンのもぐもぐタイムの30分程前に到着。ペンギン館を見終わった頃に、もぐもぐタイムになりそうとのことで館内に入った瞬間、「やられた」と思いました。なんたってドアを開けた瞬間に目に飛び込んでくるのがこれですから。
ペンギン1
館内がトンネルのような作りになっていて、壁面がすべて透明な水槽でそこにペンギンが優雅に泳いでくるんです。これが目の前それこそ10センチというところをペンギンが通り過ぎるのを見ると、これだけで興奮してしまいます。こんなに近くで動物たちを見る経験って良く考えたら無いんですよね。そんな初めての体験が興奮させるんです。
だって、
ペンギン2
こんなのを目の前で見せられちゃ、そりゃシャッター切るでしょ。

ペンギン館を出たら、人がわらわらと集まっていて、もう少しでもぐもぐタイムの始まりみたいです。時間になるとマイクを付けた飼育員さんがペンギンの種類や生態、食べるエサ、現在彼らが置かれている環境などをユーモアを交えて解説してくれます。こういう解説って今までは余程興味がある人が書籍やDVDで勉強するものだったのですが、ここに来るだけで素人でも分かった気分になれるんですね。やろうと思えばどの動物園でも出来るのに、気付かなかったんですね。

その後、園内を順番に見て行ったのですが、動物たちをどの位置で見せるのかが良く考えられているんです。これなんて客の頭上ですから。
ユキヒョウ
ユキヒョウというヒョウなんですが、お気に入りの休憩スポットが観客の通路の真上なんです。頭上3メートルくらいのところに、柵のスキマからシッポが垂れた状態で佇んでいるのを見られるんですね。当然ですがこのユキヒョウは猛獣ですから。こんな猛獣の肉球を肉眼で間近に見られるって異次元の感覚でした。

アザラシだって手を伸ばせば届くんじゃないかというところをターンして行きます。
アザラシ1
この距離だとアザラシの表情がハッキリと見えるんですね。これがまた堪らないのですよ。水族館だと彼らの動きが速くて細かい動きや、皮膚の感じ、表情などは全く分からないんですが、水槽の作りを工夫して観客の前でゆっくりターンするようにしたため、つぶらな瞳や、目の上に空いている耳穴までハッキリと見えるんです。

アザラシ館の中には、下から上を貫くようにチューブが通っているんですが、なんとここをアザラシが下から上へ通り抜けていくんです。
アザラシ2
立ち位置によっては、目の前を駆け上がっていくんですから、これは水族館じゃ体験出来ません。

この動物園は展示されている動物が珍しいわけじゃありません。展示の方法がユニークなんです。他の動物園では決して見られないシーンをどうやったら演出出来るのかをとことん考え抜いて施設が作られているんです。これが小動物ならありがちですが、ホッキョクグマのような巨大で怖い動物がすぐそばを泳いでいたら、怖いけど面白いって思いますよね。
ホッキョクグマ1

ありきたりなものを、ありきたりに思わせないために、何をどう変えたら良いのかを考えて作られた施設で、それはつまり飼育さんたちがどれだけその動物を熟知しているか、どのポーズを見せると喜ぶのかを知っているということで、これは相当風通しの良い組織でないとなかなか実現しないことなんですよね。途中から、自分ならどう見せるか?を考えながら見ていたんですが、それでも彼らの目論みを見破れませんでした。分かっちゃいるのに「やられた!」と思ってしまう、これもまた快感に繋がるんですよね。発想力の訓練としてこの動物園は是非行くべきだと思いますよ。(ただ彼らの解説がちょっと左曲がりのセンチメンタリズムに染まっていたのがどうかと思いましたけど)

この動物園で次に何かをやるとしたら、インバウンド対策でしょう。このもぐもぐタイムで飼育員さんが話してくれる言語は当然日本語だけなんですね。ところが館内には少なからぬ外国人客(一聴したところ、英語以外に、中国語、広東語、韓国語、タイ語、フランス語、ドイツ語あたりが話されていました)が来ていたんですが、やっぱりここでも英語の解説看板すらほとんど整備されていないんですね。確かに見れば分かるんですが、それだけじゃやっぱり勿体ないんですよ。せめて英語の解説は日本語と同レベルのものを用意すべきですし、もぐもぐタイムでの解説も、音声ガイドのような形で貸し出すようにすればさらに一人1,000円くらいの追加料金をもらえて、満足度も高まると思うんですよね。解説の翻訳なんてアウトソースしたら一発なんですから、そんなにおカネを掛けなくても出来るはずなんですよね。

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