自動運転はサーキットでやってみるべし

ここのところ、自動運転についての記事が多く出ていますね。
グーグルはずいぶん昔から取り組んでいて、すでに公道で48万キロもテストをしているそうです。

このあたりの話については、ちょっと前ですがこの記事がバランス良くまとまっています。
「自動運転」は破壊者か 攻めるグーグル、悩むトヨタ
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK21016_R20C13A3000000/
でも、これが日本でやるとなったらかなり揉めそうです。
万が一事故があった場合に(グーグルではこのテストで一度も事故をしていないようですが)、事故の当事者が誰なのかが明確にならないからです。自動運転で乗っている人は、運転という行為に携わっていないのですから、たとえ運転席に座っていたとしてもただの乗客で、当事者とは言えず責任を問う事は出来ません。ではこのソフトウェアを作ったグーグルのような会社が責任を負うかというと、彼らは発売時に免責条項を必ず入れると思われるので、これまた責任を回避出来るわけです。

ではこの被害者は誰に損害請求をすれば良いのか?という法律の穴を塞がないと前に進まないんですよね。これが自動運転の実現にとって大きな壁になると考えています。
で、こういう現実の話は横に措いておいて、ふと思いついた事があります。

この自動運転ってレーシングカーでやったら良いんじゃないですかね。
どうせソフトウェアに運転をさせるのですから、プログラムを修正して、より速く走れる仕様にしたら良いんです。すでにF1ではドライバーの挙動、操作、その時の車の反応などが全部コンピュータ上に再現出来るように記録されています。どのタイミングで、どれだけの強さのブレーキを掛けたのか、コーナーの立ち上がりではギアは何速で、アクセル開度はどれくらいだったか、その時にサスペンションはどの程度沈んでいたか、ハンドルはどれくらい切れていたのか、なんてすべての情報が記録されているんです。

それを元にプログラムを作ったら、レーシングカーで自動運転が出来るはずなんです。

今まで人間の方が優れていると思われたチェスや将棋の世界にもコンピュータが入り込み、しかもこれが日に日に強くなっていき、今や人間は太刀打ち出来ない状態になっています。であれば、レースの世界にも登場してもらおうじゃないかと思うんです。

100%コンピュータ制御をするなら操作ミスは起こりません。ハードウェア(F1の車体とエンジン)が同じならば、あとはプログラムの性能が結果を左右するんです。で、このコンピュータ制御のF1がベッテルを抜き去るなんて事になったら面白くないですか。もうF1レーサーって人間がやる仕事じゃ無くなっちゃいますよ。だって車の性能を完璧に引き出すプログラムを作ったら良いんですから。リアルタイムで車体やエンジンからのフィードバックが摂り込まれて、それによってプログラムの修正が自動的に行われて、速度の調整が出来るようになったら本当の自動運転が完成です。

自動運転の最後の砦は思うに、自動車というハードウェアに何か不測の事態が起こった時に適切に対応出来るのかというところなんです。走行中にタイヤがパンクしたら、人間はそれに気付けば速度を落とし、路肩に寄せて車を停止しタイヤを換えるでしょう。そのようなフィードバックをどこまで広く、深くやるかが乗員の安全性に影響してくるわけです。現実にはほとんどあり得ませんが、高速道路を走行中に石が飛んできてラジエータのホースを破損させて冷却水が漏れてきた。(知り合いで本当にこれが起こった人がいました)
人間なら、ガツンと何かが当たればそこであれ?と思って調べるんですが、コンピュータにそのような不測の事態をキャッチする入力システムが無ければ、今までのプログラム通り淡々と走り続けるだけです。

譬えていえば、ルンバが毛糸の玉をタイヤに引っかけたまま家中をグルグル回って、部屋中毛糸がグチャグチャになったようなものです。

そういうテストって市販車はあまり向いていないんですよね。だってなかなか壊れないから。壊れないように作ってあるのが市販車です。自動車は耐久消費財ですから、多少の事をやっても10年やそこらは動くように作ってあるんです。しかしレーシングカーは違います。こっちは極端な事を言えば、チェッカーフラッグを受けた直後に止まってしまっても構わないんです。レースを完走する最低限度の耐久性さえあれば、残りは速度を高める事に振り向けるんです。例えば、最高速を300キロまで上げると200周で壊れちゃう、でも今日のレースは150周でおしまいだから、あと5キロ最高速が伸びるようなエンジンの設定をする余力があるな、と考えるのがレースなんです。150周で終わるレースなら、200周も走れる必要はないんです。その50周分の余分な能力をもっと速く走るために振り向けるのがレースです。

だからF1ではやたらとマシントラブルが起こるんです。そういう車に自動運転をやらせるとフィードバックシステムって劇的に進化すると思うんですよね。それが最終的には市販車の安全性に活かされると。

こんな車がトップレーサーをぶち抜いたりしたら痛快じゃないですか。しかもそこにはF1パイロットに不釣り合いな体型をした開発者がスーツを着てコクピットに座っているなんて事が実現してもおかしくありません。だって自動運転なんですから、誰が乗っても良いんですよ。F1レーサーと同じくらいの体重の人であれば、どうせハンドル操作も何もしないんですから。
なんて事を考えていたら、ふと、これってビジネスになると気付きました。

誰が乗っても良いんなら、私が乗っても、あなたが乗っても良いんですよ。一定の体格と、Gに耐えられる体力があれば、この自動運転F1カーに私が乗ってチェッカーフラッグを受ける事も可能です。はい、この搭乗券ハウマッチ?世界の金持ちは競ってこれに乗りたがるんじゃありませんかね。だって安全なんですから。

さすがにホンモノのレースだとやり過ぎだというのなら、レースをやっていない日にサーキットを借り切って乗せてあげたら良いんですよ。「あなたもF1を体験出来る」って言って、その自動操縦車に乗ってサーキットを走れるようにしたら、お金を払っても乗りたい人ってたくさんいると思うんですよね。

これスゴくないですか。
ビジネス的にスゴく面白いと思うんですよ。

だって私これに乗ってみたいですモン。
自分でレーシングカーを運転するのは私の運動神経では100%ムリですが、自動運転なら操縦席に座っているだけで良いんですから。それでF1ドライバーの体感している速度や、Gや、コーナリングの感触を味わえる、しかも100%安全に。

鈴鹿サーキット10周走って5万円くらいなら払います。

これ、プログラムのパラメータを変更すれば、ミハエル・シューマッハとセバスチャン・ベッテル、ジェンソン・バトンの走りの違いだって再現出来るはずですよ。ま、再現出来てもそれを味わって違いを知覚出来るとは思えませんけどね。

自動車はタイヤが4つ付いているため、バイクと違って体重移動が不要で、転ぶ事もありません。シートにキッチリと縛り付けるように座っていれば安全を保証する事は簡単でしょう。それでも不安なら、安全のためのマージンをちょっと高く設定すれば良いんです。それでも気分は充分にF1パイロットを満喫出来ると思います。

ホンダあたり本気でやってもらえませんかねえ。

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