田舎暮らしの手引き その5

その農作物って誰に売るつもり?

前回、田舎暮らしの生計を農業に頼ろうとするのはムリがあるよという話を書きました。そもそもそんなに簡単に農業でメシが食えるのなら、みんな農家を目指すはずですし、離農なんて起こらないはずですし、後継者がバンバン生まれるはずなんですから。

それとは真逆なことが起こっているというのなら、それは農業ではメシが食えないことの証左なんじゃないかと思います。移住後に仲良くなったご近所の農家の人(全員が70代ですが)だって、「売れるもんなら田畑を売りたい」とか、「農業はホンマカネにならん」ってボヤいていますから。

ここには様々な問題が横たわっていて、一筋縄で解決出来るような話じゃないんです。そのあたりについて知りたい人は、この本をオススメします。

農業の持つ根本的な闇については措いておいて、実際に最大のハードルになるのが、誰にどうやって売るのかなんですね。ビジネスって売り上げが無ければ、話は始まりませんから。そして売るということは買ってくれる人がいるということなんです。これをどうやって見つけるのかが、農をビジネスにする場合の最大の問題なんです。

みなさんこれを持たないから、安く叩かれることが分かっていてもJA(農協)に卸さざるを得ないんです。逆に言えば、自分で販路を切り開ければ、ちょっとは可能性が出て来るということでもあるんです。

こう書くと多くの人は、「無農薬、有機栽培って書けば買いたい人はたくさんいるはず」と考えるんですが、今日びちょっと大きなスーパーに行けば無農薬の有機栽培なんて珍しくもありません。おまけにそれらの野菜はプロが見栄えや形までちゃんとしたものを作っているんです。

これは自分で作ってみればすぐに分かるんですが、形を揃えるのって手間が掛かるんです。曲がらないキュウリをどうやって栽培するのか未だに分かりませんもん。おまけに味には全く影響がないんですから、頑張って真っ直ぐにしようというモチベーションが高まりませんしね。

さらに収穫時期や収穫量を予想することが難しいんです。なんたって天候次第ってところがありますから、ちょっと雨が続いたり、逆に乾燥したりしただけで予定は大きく狂います。ところが消費者はそれじゃ納得してくれないんです。やっと買い手が見つかったと思ったら、欲しい品種と数量がマッチしなくて、発注してもらえないとなったら悲しいですよね。というか、これに応えられるようにするには、相当な規模でやらなきゃムリですから。

ところが規模を拡大させるとついて回るのが機械化のコストや人件費なんですね。農業って労働集約的ビジネスですから、規模の拡大以外に生産性を高めることが出来ないんです。ところが規模を拡大させると、機械化や、化学肥料、農薬を使わざるを得なくなって、それってただの慣行農法ですから差別化が難しくなるという隘路に陥るわけです。

この問題をクリアしても最後はロジスティックの問題が残ります。作ったものを消費者のところに運ばなければならないんですが、このコストがバカにならないんです。我が家でも採れすぎたトマトとかカボチャを都会に住む友人に送ってあげたくても、送料が1,000円とか言われたら「なら買った方が安いだろ」って話になるんですよね。宅配便も相当の量をコミットすれば値段を単価を下げてくれるんですが、個人経営に毛が生えた程度では全く相手にしてもらえません。

ということで農業をビジネスにする際の問題点をまとめると「顧客開拓」、「安定供給の方策」、「規模の拡大」、「配送費の問題」がネックになるということです。

 

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