田舎暮らしの楽しみ方

前回は田舎暮らしに夢を抱く人を挫けさせてしまいましたが、今回は「ではどうすれば田舎暮らしを楽しめるのか」という観点で書いてみようと思います。

田舎暮らしで農業を生業にするのは難しいということは理解されたと思うんですが、だからと言って農作物を作るなと言っているわけじゃないんです。要するに売らずに、自分たちが食べる分を楽しんで作るというのは(それを私は野良仕事といっています)アリもアリ、大アリなんです。そして田舎にはそのためのハードルがほとんどありませんから。

農作物を作るために必要な田畑ですが、これさえ調達出来ればあとはお気楽ご気楽野良仕事生活をやることは夢ではありません。なんたって日本には耕作放棄地が農林水産省の調べではこんなにあるんですから。田舎を車で走っていると耕作放棄地だらけですから。あとは地主さんとコネを作れれば良いだけなんですね。

このやり方は千差万別ですが、ポイントは地元の人と繋がって然るべき人を紹介してもらうということを考えるべきでしょう。今から私が知らない土地で野良仕事をやりたいと考えたら、まず行くのが地元の不動産屋、工務店、商工会議所、商店会、JAの支所あたりでしょう。このあたりをほっつき歩けば、使っていない農地を持っている地主さんと繋がる事は簡単だと思います。

ここでのポイントは、住むところと田畑の距離を極力短くすることです。家から車で5分のところって、都会の人からは近そうですがこれは絶対に挫折するパターンですから。歩いて3分が限度です。それ以上遠いと行くのが億劫になってやらなくなるのは必定です。ですから、住むところは田畑が決まってから考えるか、住むところを中心に田畑を探すべきなんです。場所によっては、家の前がそのまま放棄地になっている借家もありますから、そういうのを狙うと良いと思います。

そして田畑は買ってはいけません。ここもポイントです。そもそも一般の人は農家資格を持っていないので、農地を買うことは出来ないんですが、JAを通して話をすると農家人口を増やしたい思惑がある彼らは、なんとかあなたを農家さんに仕立て上げようとするかも知れません。そのために必要な農地はたったの5反ですし、これがまたベラボーに安かったりするんです。都会の人は土地信仰が強いので、5000平方メートル(1500坪)の土地が300万ですよ!って言われちゃうと、住宅地が一坪50万もするようなところに住んでいる都会の人は、これはメッチャ安いがな!って勘違いしちゃうんですよ。お客さん、それはぼったくられてまっせ。私は中国地方の某市に住んでいるんですが、このあたりだと3反とか5反の土地に、ちょっとした山が付いて、これにちょっと手を加えれば住める廃屋のような家が付いて300万くらいですから。というか、この値段、地元の人に言わせると「ずいぶん吹っ掛けたなぁ」だそうです。田舎の土地、特に農地はそれくらい安いんです。

だからと言ってこれを買うのは止めた方が良いですよ。なぜかというと、土地を買ってしまったらもう逃げられないからです。そのあたりの地域が自分に合うのか、地主さんや地元の人達と仲良く暮らせるのかが分からない状態で、いきなり農地を買うのはリスク以外の何物でもありません。だってその土地は次は売れませんから。都会の人の幻想として、土地は不動産でいつでも売却出来る、買い手はいるって考えるところにあるんですけど、田舎の土地なんて買い手はいませんから。ですから買ってしまったら出口政策は持てません。そのため買うのではなく、まずは借りるのが良いと思います。

借りる面積ですが、これは家族構成にも依りますが、実は家族構成以前に、どれくらい野良仕事に時間を割けるのかでやれる面積が決まってくるのです。おまけに家庭菜園の規模だとほとんどが人力ですからね。田んぼの田植えは半日は必要でしょう。稲刈りと脱穀は1日では終わらないかも知れません。我が家は3畝の田んぼに対して、田植えが6人でやって2時間弱、稲刈りは男が5人でやって1日掛かり、脱穀は男が4人、女が3人で1日掛かりくらいの労力がかかります。でも田んぼはまだラクなんです。田植えが終わったらあとはお水の管理と草取りだけで、草取りも除草剤を使ったらほとんどやることありませんから。

ところが畑は結構ヘビーです。我が家は100平方メートルも借りてませんが、梅雨から夏の時期は草取りでウンザリします。おまけにサイクルが早いので草取り、収穫、土作り、種まきとやることが多いんです。我が家では平均すると毎週3時間/人の工数を農繁期には掛けています。毎日やったら30分ですね。でもこれが毎日は出来ないんです。雨が降ったら作業出来ませんし、真夏は暑くて早朝と夕方しか作業出来ませんから。しかも炎天下での人力作業ですから、一仕事終わるとシャワーを浴びて昼寝が必要になります。

でも楽しい田舎暮らしって、農作物を売る必要がないところにあるんです。野良仕事の極意は、作りすぎない、やり過ぎないところです。ちょっと食べて、「ああ、美味しかった。来年もまた作ろうね」という程度がちょうど良いのです。これなら上手に出来ても飽きることがありませんし、万一天候不順などで上手く行かなくても(というか、最初は上手く行かないケースがほとんどです)ショックが少ないんです。売る必要がない、上手く出来なければ買えば良い、というスタンスでやるから長続きするんです。

なんと言っても野良仕事は人間が介入出来る要素が限られているんです。長雨が続けば苗が腐ることもありますし、夏の乾燥する時期に水やりを忘れたりしたら枯れちゃうこともあるんです。春先には季節はずれの霜が降りて植え付けたばかりの苗が全滅することもありましたし、病気にやられて全滅することもあるんです。おまけに野良仕事はタイミングが重要で、種類によっていつからいつの時期にタネを播く、苗を植えるというのが決まっていて、これを外すと後からリカバリーが効かないんです。さらに多くの野菜は年に一度しかトライ出来ないんですから。今年の失敗の経験を活かせるのはあと1年後なんですよね。

ですから、最初はたくさん作ろうと意気込まず、「採れたらラッキー」くらいの気持ちで取り組むのが良いと思います。それでもエダマメとか、ジャガイモ、落花生のようなマメ、イモ系はそこそこ採れますから。そして肝心なのは、収穫したらその日のうちに食べることです。これが野菜を美味しく食べるコツです。夕食のメニューは畑と相談して決める、という感じに慣れたころには、田舎暮らしを満喫していると思うんですよね。

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