スッポンが棲息してるって?そりゃ食べなきゃ。

ちょうど一月前のこと。ご近所さんと世間話をしていたら、ふと近くの川(岡山三川のひとつである一級河川)に野生のスッポンが棲息しているって話になったんです。この川は鮎もそこそこ(昔は手づかみで獲れるくらいだったそうですが)釣れるのですが、スッポンがいるんなら、鮎どころの話じゃないですよね、と話を振るもほとんど反応なし。みなさん子供の頃から食べ飽きているから、今さらスッポンって言われても反応しないのかなと思ったんです。

ところが話を聞いてみたらその場にいた全員が、その川で獲れるスッポンを食べたことがないということが分かり、引っ繰り返りそうになるくらい驚きました。え?イヤだってスッポンですよ。日本料理の食材としてトラフグや松葉ガニに匹敵する美食の王様であるスッポンがすぐそこの川にいるってのに、それを獲って食べたことがないというのは都会育ちの私たち夫婦には理解が出来ませんでした。

ってことは、やっぱり捕まえるのが難しいんですかね?と訊くと所詮カメみたいなものですから、獲ろうと思えば簡単ですし、網とかに良く引っ掛かっているんですよとのこと。ならそれを食わんかい!もしかして毒を持っているというオチですかね?と訊いたらそうでもなく、捕まえたスッポンを売りに行く人もいるらしいという話もありました。つまりそれって、スッポン料理を食したことがなくてあの美味しさを知らないから、目の前にある宝物をスルーしているってことなんじゃないの?と思ったら案の定そうでした。

でも聞くところによると、夏場のスッポンは泥臭くて食べられないとか、泥抜きに時間が掛かるとか、捌く人がいないとか、ま、ビジネスと同じですが、やらない、出来ない理由は無限に即座に見つかるものなんですよね。昔の私なら尻込みしたんでしょうが、今の私はビジネススキルに関するメールマガジンを書いているわけで、そこでは何度となく「とにかく行動しないと何も始まらないんだよ」なんて話を書いているんですよ。そんな私がこの程度の困難、障害に怯んで諦めるわけにはいかんのですよ。ま、正直な話、天然物のスッポンの誘惑に勝てなかっただけなんですけどね。横に座っていた家人なんて、話を聞きながら目を輝かせ始め、脳内ではスッポン堪能中のイメージが立ち上がっているのがよく分かります。

こうなったら一度は食べてみなきゃならんってことで、次にどなたかがスッポンを捕まえたら分けて頂けるようお願いしたんですが、地元の人は半信半疑でホントに食べるの?という目をしています。そこからはスッポンってどうやって食べるのか、どんな味がするのか、東京ではこれが如何に高級料理として認知されているのかを滔々と説明し、これを食べない、試してみないのは勿体ない話なのだと熱弁を振るったわけです。

それから一週間後、家人の携帯にスッポンが捕れたという連絡が来ました。キター!スッポンじゃ!と喜んだんですが、あいにく翌日からは4泊の予定で出張が入っています。今回はムリかなと思っていたら、なんと帰って来るまで生け簀で預かってもらえるとのこと。さすが田舎。生け簀を持っている知り合いがサクッといるわけですね。

そして帰宅後、やって来ましたスッポン様が!しかもなんと2匹。ところでスッポンってどう数えるんでしょうか。匹、頭、どっちでもいけそうですが、調べてみたところカメは一匹ですがスッポンは一マル、二マルって数えるみたいです。ですから我が家に2マルのスッポン様が、我々の胃袋目指して怒濤のがぶり寄りでやって来たわけです。

さてこれをどこに置いておくか。まさかヒモを付けて放し飼いってわけにはいかず、やっぱりお水があるところが良いよね、でもバケツじゃ小さいし。ということで、プラスチックで出来た衣装ケース(積み重ねられるヤツ)を空けて、そこに水を入れてスッポンを投入。そしてフタをして重しを載せれば、一晩くらいどうにかなるんじゃないかと思ったわけです。

ところがこれがどうにもならんかったんです。翌朝、様子を見たら既に1マルのスッポン様が昇天遊ばしていまして、悲嘆に暮れたわけです。ネットで調べてみたら、死んでしまったスッポンは食べられないとのこと。こうなったら予定を変更して、もう1マルが元気なうちに捌いて食べるしかないという結論に至り、そこから慌ててネットでスッポンの捌き方を検索しました。そうしたら出て来る、出て来る、プロの料理人から素人まで、たくさんの動画が見つかりました。家人もヤル気全開、食べる気満々でスタンバってます。

まずは、死んでしまったスッポンで練習をしてみようということで、動画の通りにやってみます。その結果出来たのがこれ。

なかなかキレイに捌けました。でもこれは死んでるヤツでだから動かないわけですよ。ところがこれから捌かなきゃならないのは、ガサガサと動きまくっている活きの良いヤツで、おまけにガブッと噛まれたらシャレにならないことになる凶暴な生き物ですから。結論を言えばやりましたよ。やらなきゃ食べられないんですからやりますとも。その模様の一部は動画に撮ったんですが、あまりにもグロいので公開出来ません。生き物を絞めるというのは、スッポンに限らずブタだって、牛だって、鳥だって、魚だって同じなんですよね。自分がやらず、切り身になっているヤツを買うから罪悪感がないだけで、誰かがその仕事をやってくれているんです。豚肉を頬張りながら、「私には動物を殺すなんてムリ~」って言ってるヤツは偽善者ですよ。自分は殺さないけど、他の誰かが殺してくれた肉なら食べるのか?って話ですから。そうやって汚い仕事、やりたくない仕事を他の人に押しつけると、そのうちそういう仕事をしている人を見下すようになるんですよね。同和問題ってそれが起源ですから。つまり、自分は殺すのはイヤ、でも捌いてあるお肉は美味しいと言う人は、思想の根っこに差別的体質を持っているということだと思うんですよね。

動画では見せられないので、文章で説明すると、スッポンってまずは頸を落とさなきゃならないんです。そのために甲羅を下にしてスッポンを押さえると。そうすると元に戻ろうとして頸を伸ばすんですね。そこをギュッと首根っこを捕まえて出刃で頸を落とすって説明されているんですが、ムリでした。やっぱり噛まれるのが怖くて、ギュッと掴めないんですよね。だから伸びた頸の根っこに出刃を当てることになるんですけど、これだと余程出刃の切れ味が良くないと切れません。今回のケースでは5箇所くらいに包丁の刺さった痕が出来て、そこから少しずつ出血することで徐々にスッポンの体力が落ちて、最後にようやく頸を落とせたという感じです。これってスッポンを余計に苦しめているんですよね。分かっちゃいるけど、思い切って頸を掴めませんでした。ここは次回の課題ですね。

頸さえ落ちたらこっちのものです。まずは甲羅を外します。

甲羅が取れたらこんな感じになります。

そうしたらゼラチンたっぷりのペラが外れます。ここがプリプリして美味いんだ。

ふと見るとなんとタマゴを持っていたメスだったことに気付きました。こりゃ美味そうだ。

さらに料理用のハサミでジョキジョキと切ります。このあたりは出刃よりも良く切れる料理用ハサミの方が作業がしやすいと思います。我が家のヤツは山陽道三木サービスエリアで購入したハサミで、さすが刃物の町だけあって切れ味バツグンでした。

問題はここからの処理で、肉の解体が終わったら、軽く湯通しをするんです。そして肉や皮の表面をこそげ取ると、体表に付いている薄皮がベロベロと外れます。この作業が大事みたいで、これをちゃんとやると臭みが出ないみたいなんです。その作業が終わった状態がこれ。

ここまで来たら完全に食材としか思えません。(「食材」と入力したらいきなり「贖罪」と変換されたので焦りましたけど)ホントは内臓も食べたかったですし、お刺身でも食べてみたかったんですが、今回は涙を飲んで自重しました。もちろん天然もので管理されていないので、血を飲むのもムリだと思います。食材は全てしっかりと火を通して頂きます。

まずは出汁をしっかり取ります。この時点で美味そうな油が出ています。

後はフツーの鍋と同じで野菜や豆腐を入れて味を調えたらOKです。完成図はこれ。ポン酢で美味しく頂きました。

食べてみた感想は、どこが泥臭いんじゃ!って叫びたくなるお味で、臭みなんて全くなく、ゼラチンプリプリ、お肉はしっかり歯ごたえ、噛めばジュッと旨味が出て来る、まさにスッポンのお味でした。

もちろん翌日は残りの出汁で雑炊を作ります。これがまた、玄米とジャストミートでふぐ雑炊に匹敵する美味さでした。

ってことで、年内にあと何回かはやってみようと思います。ビバ、田舎暮らしですな。

カテゴリー: 田舎暮らし パーマリンク

コメントは停止中です。