都会に人が集まりすぎてるから車が売れないんじゃないの?

今回書くエントリー、実はちょっと前にツイッターで書いたのがそれなりに回ったので、改めてここで書き直してみようと思ったわけです。

ここのところ、若者の車離れが目立ってきたと思います。

以下を見てもらうと分かるように、確かに若者を中心に車に乗らない、車を所有しないという人が増えているようです。

若者の車離れについて
Wikipedia若者の車離れ

若者だけがそうなのかというと、そうでもなく国内での販売台数が全体的に右肩下がりになっている様子が以下のグラフからも読み取れます。

国内販売台数の推移

そもそも日本の総人口がピークを迎えて、これからは人口減社会が訪れる事は確実なのでこれからもこのトレンドは続くモノと思われます。それを見越してか、マツダなどは車を運転する人を増やそうとこんなメッセージを発信しています。

Be a driver.
http://www.mazda.co.jp/beadriver/

つまり、車を売る前に運転する人を増やさなきゃという事なんでしょうね。
(個人的にはこれは一企業ではなく、自動車業界全体でやったら良いと思うんですけどね)
世間では、ではどうしたら良いのかと?いう議論も喧しくてネットメディアなどでは多くの原因が挙げられています。

曰く、

▼ 若者の年収が下がったからだ

▼ とにかく保有するための経費が高すぎる

▼ ワクワクする車が発売されない

▼ 都会は公共交通機関が便利で車は必要ない

▼ 渋滞が多くてイライラする

こんなところに理由を見出しています。
これはこれで正しいと思うんですが、それ以前に振り返らなきゃいけない現実があるんじゃないですかね。
それは、

● 都会への極度の人口集中

ですよ。
ここでの都会って、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)と大阪府の中心あたりを指しています。

とにかく全国からこのエリアに人が集まりすぎているんです。
東京都だけで1300万人って、日本の総人口の10%を超えています。これに神奈川の900万人、埼玉の700万人、千葉の600万人を合計すると3500万人以上が住んでいます。

これらの地域の面積が日本全体のどれくらいを占めるかというと、東京都は0.57%、神奈川は0.63%、埼玉はちょうど1%、千葉は1.36%と合計しても3.56%しかありません。

関西でもこれは同じで、大阪府なんて880万人も住んでいるのに、面積は香川県に次いで全国で2番目に小さいんですから。

これって本当に異常だと思うんですけど・・・

田舎に移住してこちらの風景に慣れてしまうと、たまに東京や大阪に行くとドン引き状態になるんですよ。何がって、家と家、ビルとビルの間がほとんど無くて、オマケに庭も無い状態で建物がビシッと密集している光景ですよ。電車に乗って街並みを眺めるとひたすら建物が並んでいるんですよね。こんな狭いところになんで家を建てるんだ?ってくらいの間隔で、満員電車のような密度で。

これに加えてマンションのような集合住宅があるわけです。

これだけの人たちが車を運転したらそりゃいくら道路を作っても渋滞しますがな。
いくら高速道路を整備しても、これだけ人がいれば追いつくわけがありません。
そりゃ駐車場代が、田舎の賃貸マンション代くらいするわけです。

そんなところで車を買っても全然車としての機能は果たせませんし、ましてやドライブする楽しみなんて郊外に行くか夜中に走るくらいしかありませんよ。
しかもこういうところは公共の交通機関が極めて発達しているので、車を持たなくても全然困らないんです。

ここに追い打ちを掛けるかのように、昨今の年収減少トレンドがかぶさると、そりゃ若者が車を買わなくなるのも分かります。

そもそも車を所有するというだけで、なかば懲罰的なコストが掛かるわけで、これを補って余りあるメリットが無ければ所有する価値が無いんです。そしていま、都会に住んでいる若者たちは、その価値を見出せないと判断した結果自動車を買わなくなったのです。

つまり大胆に言うと、都会に人が集中するという事は、自動車の販売にとってはネガティブ要因になるんです。
自動車販売という意味では、都会から人がドンドン逃げ出して田舎や地方都市に分散する方が売れるという事です。
これ、田舎の状況を考えてもらえれば分かります。

田舎ってバスも汽車(電車じゃ無いよ)もとても不便で、ハッキリ言って役に立ちません。そうなると必然的にみなさん車で移動するわけです。コンビニに行くにも車、買い物も車、ジジババが病院に行くのも車、子供の送り迎えも車、通勤も車、野良仕事に行くにも車、ご近所に行くのだって車で移動します。

そうすると、一家に一台じゃ足りません。フツーに免許を持っているオトナ一人につき一台の車を買う事になります。これ、年収の低い若者だって買いますから。どう考えても、田舎の人の年収の方が、都会の人よりも安いわけですよ。それなのに必要に迫られて買うわけです。私だって移住後もう一台買い足しましたから。

で、田舎では車庫用の駐車場代ってほとんど掛かりません。みんながこれだけ車に乗れば、家に駐車場があるのが当たり前です。ですからどんな安いアパートにも駐車場は付いています。そしてほとんどの場合、駐車場代は家賃に含まれているんです。ちなみに一軒家の場合にはそれすらかかりません。だって田舎って家の敷地が広いですから、車の一台や二台、駐車する場所には困りません。

車庫用だけではなくて、有料の一時貸しの駐車場(コインパーキングね)も都会に比べれば激安です。岡山駅前でも1日停めて700円とかありますから。だいたい1時間200円とか高くて300円くらいが相場です。これなら車で移動するのをためらう必要がありません。

さらにさらに、田舎では渋滞も少なくて信号の数も少ないですから、必然的に燃費が良くなるんです。私の乗っているエコカーは、横浜時代にはリッター10キロちょいだったのが移住後はフツーに14キロとか走ります。もちろんその分距離は行くんですけどね。しかしここには車が車として快適に機能する環境があります。仕事で東京に行ってタクシーに乗ると本当に驚きます。走っている時間よりも信号待ちをしている時間の方が長いんですから。しかもこの信号が進行方向見渡す限りズラッと立っている風景は、見ていると胸が悪くなります。かつてはそれが当たり前だと思っていたんですけどね。
ここまで読んでもらえば分かるように、田舎というか地方都市というのは自動車にとって有利なんです。つまり、都会から田舎に人が移ってくれば、なかば自動的に自動車を買う人が増えてくるという事です。だとしたら自動車メーカーが採るべき施策は、会社を挙げて若者の移住を促進する、人口を都会から田舎、地方都市へ移転させるという事なんです。

今どき都会の若者にコマーシャルを流しても車は売れませんよ。

自動車メーカーがやるべきなのは例えば、

▼ 農業法人を作って耕作放棄地を買い、そこで農業研修をやったり

▼ 事あるごとに田舎暮らしの良さをアピールしたり

▼ 逆に都会の生活をDisったり

▼ 自らの本社を田舎に移したり

▼ 工場を田舎に作り、そこでの給与を都会よりも高くしたり

▼ キャンペーンや新型車の試乗は田舎を中心でやったり

▼ CMはすべて田舎で撮影し、田舎の風景をフィーチャーしたり

▼ 部品メーカーや系列会社も丸ごと田舎に移転しちゃう

▼ マスコミでの広告も田舎ネタに手厚くおカネを落とし

▼ EVの充電所は田舎から配置する

なんて感じで、田舎の人にアピールをする施策を通じて、グループ会社を挙げて田舎への人口移動を図る事だと思うんです。

もちろんこれは政治とも絡めてやらなきゃダメだと思います。(自動車会社は基幹産業ですから相応の発言力はあるはずですし、何よりカネを持っているんですから力が無いわけがありません)つまり、

▼ 都会への一極集中を促進するあらゆる政策に反対し

▼ 都市部へのさらなる道路インフラへの投資に反対し

▼ 逆に都市部では車が不要になる政策に賛成する

って事をやるべきだと思うんですよね。

ここで追い風なのは、安倍政権が地方再生というスローガンを掲げている事です。
ここに自動車メーカーが乗っかったら強力な流れを作れると思うんですよね。

石破地方再生相と組んで都会から田舎、地方都市に人が流れるようにする。地方出身議員と超党派連合を作って取り組めばかなり色々な事が出来ると思うんですよね。だいたい今でも議員って地方選出者の方が多いんですから。例えば、自動車税や重量税の一部減免、地方の高速道路の無料化なんて、彼らがタッグを組んだら今すぐにでも出来る政策です。地方の道路なんてどうせガラガラなんですから、道交法を改正して田舎の制限速度、法定速度を10キロくらい上げたら良いんじゃないですかね。

これからは都会は公共交通機関で、田舎は自動車主体でという棲み分けをした方が国家運営としては投資対効果が高いはずなんです。

都会は人口の流入に道路の整備が追いつかずに慢性的な渋滞になっています。それでもこれからも人口が増えるのならジャンジャン道路を作らなきゃいけません。ところが都会の地価は高いですし、すでに余っている土地はありませんから、高架にするか地下にするかしか選択肢がありません。これがさらに建設費を上昇させるわけです。どこにどうやって作るんだと訊きたいくらいです。特に一般道については土地が余っていないんですからもう打つ手は無いんです。

これに対して田舎や地方都市って、まだまだ土地が余ってます。よしんば人が増えて渋滞が問題になっても、高速道路を作らなくてもバイパスを作るだけで十分対応出来ます。そもそも論でいえば、道路財源って地方にも遍くバラ撒かれていたわけで、そのおカネでもうお腹一杯ってくらいの道路整備は終わっているんです。ウチのあたりだってあらゆる農道にアスファルトが敷かれていますから。高速道路や有料道路だって同じです。北海道あたりじゃ有料道路の利用率が低くて(だって一般道でも混んでいないんだからおカネを払って有料道路を使う人なんてそんなにいませんよ)税金の無駄遣いだって言われているくらいです。つまり田舎を自動車優先に切り替える事について、新規のインフラ投資はほとんど要らないという事です。

田舎に人が集まれば、利用する人がいないのに、オラが村にも高速道路をなんてリクエストで作られた道路を有効活用出来るわけです。田舎のカーライフにちょっとだけエコヒイキをするだけで、田舎や地方への人口流入が起こって死産が資産になるというわけ。過去数十年掛けて投資をした分が活用されるだけなので、この政策に追加投資はほとんど要らないはずなのです。

ではどうやって田舎や地方都市に人を移転させるのか。そのためには自動車メーカーは率先して軸足を地方へ移すべきなんです。都会ではなく地方で経営する事で、自社だけでなく関連企業がゴソッと移転してきます。

日産なんて横浜に工場があるんですが、こんなのは売ってしまってそのおカネで地方に工場を建て直したらどうですかね。地価の差額を考えたら案外ペイしませんかね。工場が移れば系列の部品メーカーも移転するので一番良いんですが、工場がムリなら管理部門系をゴソッと移転させるとか。田舎に来たいという人はたくさんいるんですが、最大のネックは雇用なんですよね。これ、自動車メーカーが来ればガラッと話しは変わります。

これからデザインすべきなのは、都会と田舎、地方都市でのライフスタイルの棲み分けだと思うんです。都会では車なんて持たなくても便利に快適に生活が出来る。そのために公共の交通機関にもっと投資をする。そうやって個人の移動を公共の交通機関にシフトさせる。都会の道路は貨物のような商業物流とバスのようなマスの移動に特化する。そうやって自家用車が道路を占める率を下げさせる。道路が余ったら自転車専用道に切り替える。こういうライフスタイルが気に入った人が集まってくるようにする。

反対に田舎や地方都市は、都会に比べればそれほど便利じゃないけど、自動車文化としては使い勝手が良い、ランニングコストも安い、そして快適である。そういう街作りを目指していく。今でも田舎、地方は車中心の社会になっているんですから、このライフスタイルを人口流入に結びつける政策、施策を官民で考える。

結局今の流れが継続し、定着してしまったら、一番ガミを食う(損をする)のは自動車メーカーなんですから。これ以上都会に人が集まって、さらに道路が混雑して、空気が悪くなって、自動車が全然便利な存在じゃなくなったら、さらに自動車は売れなくなるんです。

ま、でも日本の自動車メーカーって海外売り上げ比率が高いから、日本の市場が凹んだ分海外で売れば良いんじゃないのって考えるんでしょう。だからこそ、本当はこういうのは政治主導でやらなきゃダメなのかも知れません。

なんてエントリーを書いた途端こんな記事を発見。

東京集中「望まぬ」半数=内閣府が初の調査

 

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